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KILLER  作者: 夕凛
プロローグ
1/4

プロローグPart 1「それは、雨の日だった」


 学校の先生は、暴力を振るわれてその仕返しをしようとする生徒に対し、かねてよりこう言う。「アイツにやり返したら、お前もあいつと同じだぞ」、「お前がアイツと同じところまで落ちてやる必要はない、だから我慢しろ」、と。

 そしてまたある人は、理不尽な力に対して、憎しみで返してはいけない、と説いた。憎しみの連鎖が生まれるからだとか。だが、いづれも僕は反対だった。

 やられたことの仕返しをしたとしても、それは単に弱い者虐めで振るった暴力ではないし、自分に対する理不尽な力は、その力の分だけ相手に返すべきだと考えている。そうでなければ、弱者はずっと弱者のままだ。


「おーい。なにボーッとしてんだよ。鬼にでも取り憑かれたか?」


 学校の昼休み、机に肘をついて頬杖をしていた俺の額を、もしもし生きてますかーと言わんばかりに目の前の男はつついてきた。彼の名は沢良宜(さわら)紳助(しんすけ)。今年一年ぶりに同じクラスになった、僕の友人である。


「だとしたらこの場の全員もう死んでる」


「冗談だよ」


「知ってて本気にしたんだけどねえ」


 からかうために。


「はぁ。それにしても、殺人鬼(マーダー)ねえ。ある意味、戦時中より物騒な世の中だよな」


「それもこれも、今俺らがここで生活できているのでさえも、全部AMA(エー・エム・エー)のおかげだ」


 まったく、生きにくい世の中だ。殺人鬼(さつじんき)などと...。はぁ。

 殺人鬼、あるいはシリアルキラー。数十年前までは、殺人鬼とは性格の一端、ないしは一部の人格破綻者のこと。人を殺す事に心理的欲求を覚えるもの等々。

 今となっては、バケモノの総称となってしまった。


「AMAね...。アンチ・マーダー・アンニハイレイション・ユニット。通称AMA。アマとも呼ばれる、か」


 Wikiに掲載された文章を、そのまま読み上げる。


「警察も楽じゃねえよなあ。殺人鬼(マーダー)は人と見分けがつかない。食うも生きるも、人そのもの。ただ、人を殺す衝動を抑えられない者たち。それを見分けて狩り取るのが仕事だもんなあ」


「僕はそんな仕事はゴメンだ」


「まあまあ。シビュラに職業を決められる世界でもないんだから。自分で選べるだけいいじゃないか」

 

「それを言っちゃあお終いだよ」


 とまあ、コイツと話していると勝手に時間がすぎる。せっかくの休み時間を、読書の一つにもあてられない。それなりに楽しいから、まいいけど。


「おーい、稜守(いかみ)〜!」


 と突然、大きな声で廊下からお呼びがかかった。その人物も、僕を呼んだ用事もわかる。どうせ、


「お金、貸してくれーーーっっ!!」


「この間も貸して、まだ返ってきてないけど」


 というより、大声出すなバカ野郎。


「すまん!!この通り!!!」


「明日までなら了承しよう」


 このままだと、廊下のど真ん中で土下座されてしまいそうなので、仕方なくオーケーした。


「おぉっ!サンキューな!」


 忽然と現れて僕にお金を借りて去っていった彼は、夜巻一歩(やまきはじめ)という隣のクラスのやつだ。去年までは、僕と同じクラスだった。


「また夜巻か。お前もよく相手にするよな〜」


 沢良宜のヤツが頭のうしろに手をあてて、のんびりした態度で教室から出て来た。


「アイツとはお前より知り合った時期が早いからな」


 そういう問題か?と首を傾げつつも、追求はしてこない様子だった。


「どこ行くんだ?授業始まるけど・・・」


 教室から去ろうとする沢良宜に一声かけると、トイレだと言って小走りでその場を後にした。


「ふぅ。夜巻のおかげで沢良宜との会話も途切れたし、少しの間だけでも読書に勤しむか」


 一息つき、本を広げる。目の前に活字の景色を広げた瞬間、午後イチの授業の始業ベルがなり、またもや一つ息が出る。


「あ、次は実験室か」


 周りに人はいなかった。


「沢良宜のヤツ、あとで飛ばす」


 ひとまず、ダッシュで実験室まで走った。

 鳴り響くチャイムも、どこかしらの教室に授業に向かう先生の目線も、全て振り切った。





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