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釘バット少年A

作者: テクマ

「ふにゃ、ご飯だよー、ふにゃーー。

どこに行ったんだろう、いつもなら飛んでくるのに」


異世界の畜産農家、ノース家の納屋で三女のジジは居候の猫人族少女、ふにゃ、を探していた。


「どうしたの、ふにゃ、いないの?」

「あっ、母さん、どこかに遊びに行ったのかな」


ジジと母親はご飯を置いて母屋に帰った。


「すまないのだ、すまないのだ、もう、ふにゃ、は昔の、ふにゃ、ではないのにゃ」


納屋の天井に隠れて親子の姿を見ていた、ふにゃ、は後ろに立てかけた釘バットを恐れるように見た。


「どこからどう見ても魔物の持つ棍棒だにゃ、なぜ興味本位で拾ってしまったのかにゃ。いじめっこの人の子は追い払ってくれたが、捨ててくるわけにもいかないし、うちに戻れないにゃ」

「・・・・」

「棍棒様のお呼びなのにゃ。

ははぁ、お呼びですか棍棒様、だにゃ」


ふにゃ、は釘バットの前で平伏した。


「・・・・」

「ご飯を食べてよろしいのですか、ありがとうございますにゃ。

棍棒様はどうなさいますか、にゃ、半分お分けしますか、にゃ」

「・・・・」

「食べたくない?食べられない、ですよね。かしこまりましたにゃ」


ふにゃ、は飛び降りるとご飯の入った器を持って天井にもどって来ると、ご飯にかぶりついた。


「うまいのにゃ、ジジのご飯は極上なのにゃ」

「・・・・」

「さっき川で魚とって食っていただろ?とおっしゃいましたかにゃ。

これは別腹なのですにゃ」

「・・・・」

「ふにゃ、は母屋に入れますにゃ」

「・・・・」

「・・ええ、結界があるので、棍棒様は入れませんにゃ」


マガマガしい姿の棍棒を持って母屋に入ったら親子が驚くので持って入れない。だがそうとは言えないのでとっさにウソをついた。その日は納屋ですごすことにした。





「母さん、ご飯は無くなってる」

「綺麗になめとってお椀だけ残しているってことは、いることはいるようだね」

「連れてこようか」

「何が気に入らないんだか、こうなれば意地でも出てこないよ。

しかし困ったね、近所の農家にゴブリンが出たようだから母屋に結界をはりたいんだが、納屋までは無理だよ」

「私が呼び掛けてくるよ」


お父さんが納屋に行った。


「おーい、ふにゃ、今日はゴブリンが出そうだから母屋においで、厩舎も結界をはるから入れなくなるよ、もし来る気がないならどこかに隠れているんだよ。もう少しで結界をはるからね」


「・・・・」

「今なら入れそうじゃん、ではありませんですにゃ」

「・・・・」

「いえ、ここで過ごします。ゴブリンが来る、は何回も聞きましたが本当に来たのは一回だけですにゃ」

「・・・・」

「俺をはなすな、ですか?

分かりましたにゃ、棍棒様はさみしがり屋ですにゃ」


その夜、母屋に結界がはられ、ふにゃ達は納屋ですごすことになった。


「・・・・」

「・・・・もう食えないにゃ、お持ち帰りにするにゃ」

「!」

「はっ、こ、棍棒様、なにかにゃ」

「・・・・」

「ゴブリンですにゃ、ゴブリンが母屋の床下から家のなかに入ろうとしているにゃ」


結界がはられていない床下にゴブリンが潜り込んでいるのがわかった。お父さんがふにゃのために結界を開けておいてくれたのだ。


「行くか?」

「棍棒様力をお貸しください、と言っても、ふにゃ、を苛める人間の子を追い払ってくれた程度の力ですが」

「もうちっとはあんよ、あとは気合いや」

「大恩ある親子を見殺しにできないにゃ、ましてや、ふにゃ、のために開けてくれた入り口からゴブリンを入れることは出来ないにゃ」


母屋の中から悲鳴が聞こえた。床下に潜り込んで来たゴブリンを中に入れないように必死に抵抗しているようだ。ふにゃ、は棍棒をかかげると震える脚に力を入れてゴブリンにかけよって棍棒を振り下ろした。

「ふにゃーーーー!!!」

バキバキ、ゴブリンの背中に釘が刺さって血を吹きながら絶命した。まわりにいたゴブリンは、ふにゃ、に襲いかかってきた。

「かかってこいゴブリンども!だにゃ」

ふにゃ、は片っ端からゴブリンを釘バットで殴りつけて倒していった。一晩中ゴブリンは絶えることなく押し寄せて来たが、ふにゃ、はその総てを打ち殺していった。やがて夜が明ける頃にはゴブリン達は逃げていった。すると母屋から親子が出てきて言った。

「ふにゃ、なの?」

「ふにゃ、じゃありませんにゃ、通りすがりの暴れん坊ですにゃ」

「いや、ゴブリンのかえり血でどろどろで分からないって意味で言ったんだよ」

「こんな荒くれな姿をみせたくなかったにゃ」

「早く家にはいってお湯で血を洗い流そう。ふにゃ、のおかげで助かった、ゴブリンは当分来ないだろう。

しかし、ふにゃ、は強いんだな」

「だから、私は旅の・・・・」

「いいから入りなさい、その棍棒も洗ってあげよう」

「この棍棒が怖くないのかにゃ」

「この棍棒と、ふにゃ、はうちの守り神だよ」


ふにゃ、と釘バットは家に入って綺麗に洗ってもらって皆で朝御飯を食べた。



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