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六十センチ
夏休みに入る少し前の日常
いつものように登校して いつものように授業を受ける
チョークの音と扇風機の音だけが 静かな教室に淡々と響く
時々流れる夏風が 後ろの席にいる私たちに涼しさを運んでくれる
少し汗ばむこの体は 夏のせいで熱いだけ
言い聞かせる度に 窓際に座る君を見てしまう
風になびく髪が 授業を真剣に聞いている顔が
毎日見ているはずなのに 毎日違うように見える
何のために勉強するのかと聞かれれば あなたと同じ場所にいたいから
そのためだけに勉強してきた そのためだけで勉強できた
終業のチャイムが鳴り響く あと何回この横顔を見ることができるのだろう
数えきれないほどだとしても いつか終わりが来てしまう
そうなる前にと思う心は 臆病すぎて動かない
せめて少しでも 長く見ていられるように
せめて少しでも 近くにいられるように
勉強だけでも自信を持って あなたの隣に居られるように
今はまだ 近くて遠いこの距離を
もう少しだけ縮めたい
もう少しだけ隣にいたい
昼想夜夢日々 依々恋々と
私の春は 終わらない