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「ねえ、聞いた? 例の噂」

「噂って?」

「ほら、新しい電子ドープが出回ってるってウ・ワ・サ。めっちゃトブんだって」

「……あのね、マヤ、そういう話はもうちょっと隠れてしたら?」

「えー、いいじゃん。今度レイネも一緒に行こうよー」

「わたしはパス」

「レイネってば釣れなーい」


 学校のロビーでするにはちょっと外聞が悪い話題にきょろきょろと周囲を窺うと、一対の瞳と目が合った。向こうもそれに気づいたのか、こちらへと近づいてくる。


「……おはよう、ハクナ」

「おはよう、レイネ。マヤも」

「おー、ハクナじゃん。ね、ハクナも今度一緒にぶっ飛ぼうぜー」

「もぉ、やめなよ、マヤ」

「ぶっ飛ぶってなに? 面白そうだね」

「ちょっとハクナ⁉︎」


 いつも通りの、三人でのくだらないおしゃべり。マヤもハクナも楽しそうに笑っていて、わたしも楽しいのだけれど、でもどこかに大事な何かを置いてきてしまったような漠然とした喪失感が常にある。


 この感情は、いったい――


「どうしたの、レイネ? 元気なさそうだけど」


 心配そうに眉を顰めて覗き込んでくるハクナの指先が、わたしの指先に軽く触れた。


 その感触は、『大事な何か』の輪郭をなぞって、疼くように消える。


 ハクナもまた、戸惑うような表情をその端正な顔に浮かべる。


 けれどどちらもその感情をうまく言葉にすることができなくて、ぎこちなく触れていた指先を離した。


 触れる、ということの意味を、わたしは初めて考えてみたくなった。


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