第1話:転校生
ある朝、風神剛は、同級生でいとこの箕輪利香子を後ろに乗せて自転車を走らせていた。
「うん、今日も良い天気だね。りかちゃん」
風神剛は、快調に自転車を走らせながら、りかちゃん、りかちゃんと声をかけた。
「もういい。降りる!とめて」
箕輪利香子は突然、声を上げて、いった。
風神剛は、驚いて自転車を止めた。
箕輪利香子は、自転車から降りると、ほっぺたをふくらませてスタスタと先を歩き始めた。
「おい、ちょっと待てよ。なんで急に怒り出すんだよ」
「馴れ馴れしくりかちゃん、りかちゃんって呼ぶからよ」
「って、いとこどうしなんだから別に良いじゃねえか」
「同じいとこでも、あんたじゃなく宗政兄ちゃんならね。宗政兄ちゃんがうちの学校に来るべきだったのよ」
剛は、自転車から降りて利香子のあとをついていった。
「宗政兄ちゃんなら、剣術も最高に腕が立つし、背が高いし、何よりかっこいいわ」
「その点、あんたはちびだし、剣術の腕も平凡。人並み。
なんであんたなんかが、剣術都内ナンバー1のうちの学校に来られたのか不思議でしかたないわ」
顔に汗を浮かべて、剛は、
「そんなこといったって・・・。僕が呼ばれたのは、学園理事長である君のお父さんから、直々に指名されたからじゃないか」