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ショートショート6月~

記憶の向こう

作者: たかさば

昔住んでいたアパートを見にいこう。


ふと思い立って、出かけてみた。


ずいぶん昔の、ずいぶん幸せだった頃の思い出は、私の中でずいぶん色褪せてしまったから、色を分けてもらいたいと思い立ったのだった。



あの頃は、私もずいぶん前向きだった。


あの頃は、私もずいぶん夢を見ていた。


あの頃は、私もずいぶん若かった。


あの頃は、私はまだ何も知らなかった。


あの頃は。


あの頃は。


あの頃は。



久しぶりに、駅からアパートへの道を辿る。


あの日通った道が、変わっている。


コンビニがなくなった。


草だらけの家がなくなった。


自動販売機がなくなった。


綺麗なアスファルトが広がっていた。


広い道路が広がっていた。


私の知る道が、どこにもない。


わたしの知る道の面影だけが、時折ふわりと漂う。



アパートのあった場所にたどり着くと。


アパートは様変わりをしていた。


二階建てだったはずなのに、三階建てになっている。



あの頃毎日上った階段が、三階へと伸びている。


あの頃毎日開けた窓が、テラスで隠れて見えない。


あの頃毎日笑った部屋が、どこにも、ない。



あの頃の色を分けてもらおうと思って赴いたというのに、どこにもあの頃の色は存在していなかった。



私の中の思い出が、一番色濃くなってしまったのだった。



私の中に残る色を、忘れてしまうそのまえに。



少しでもあの頃の色を残したい私は、あの頃を思い出して、物語を綴り始めた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 景色は変わっていきますよね。 私の地元なんて、昔は田んぼが広がってたのに。田んぼがなくなって住宅地が増えてきてます。すごい窮屈に感じるんですよね。
[良い点] >色を分けてもらいたいと思い立ったのだった。 ↑ おしゃれ。色を分けてもらうかぁ。いいなーいい表現だなー [気になる点] 自分もやった事あります。コンビニが潰れたくらいで、割と当時のま…
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