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 7話  神々の真実

訪問ありがとうございます。


拙い文ですが良ければ読んで頂けると幸いです。


感想・ご指摘お待ちしております。

青黒い凍てつく冷気が容赦なく荒れ狂い、何処を見渡しても地面や岩など、あらゆる物体が銀色の氷塊と化して訪れる全ての者に牙をむく。此処(ここ)は《獄氷の間》。だが決して寒くなど無い。地獄の冷気は命と魂を蝕みやがて全てを奪う見えない略奪者だ。

とてつもない大きさの山が幾つも連なる中に、一か所だけ山を削って建てられた真っ黒な城があった。山と一体化した黒い城は天空の巨城と同じくらいの大きさで、周囲には異常な暗黒の冷気が侵入者を拒むかのように渦巻いている。

さらに重々しい城門の両脇に、2人の化け物が佇んでいた。



2人の姿は木製人間といった感じで、醜悪な顔に8(メートル)はあろう馬鹿デカい図体、肩と頭と背中に真っ白い葉を蓄え巨大な斧を背負っている。口から吐く息は周囲の冷気と同じく青黒い。彼らはトレントエグゼクターという種族で、皇帝ドルガの暗黒城を守る門番だ。



「おう!ボジョ、知ってるか?」



門の左を守るトレントエグゼクターが金に輝く髑髏のアミュレットを大事に触りながら野太い声で右の門番に話しかける。



「何がだゾジョ?」



ボジョと呼ばれた門番は、周囲の警戒を解きゾジョという門番へと顔を向ける。

暇な時はとことん暇な職を担う彼らは、いつも通り、噂好きのゾジョより話が持ち出され雑談タイムに身を投じたのだった。



「さっき運ばれて来たヤツだがよ、ありゃ神だって噂だぜ。ダビーから聞いた。蝕壊王ピナムー様がエンマ達と話してたんだとよ」



知らない単語を耳にしてボジョは醜悪な顔をさらに歪ませた。



「カミ?何だそりゃあ。ゾジョ、お前はカミが何だかわかるのか?」



「ボジョ、知っているとも。ダビーから聞いた話じゃ、神っていうのは現世の管理者らしいぜ。現世の奴らにとっちゃあピナムー様とか、ドルガ陛下みてぇな存在なのかもな」



ゾジョからビッグネームが飛び出し、ボジョは木製の目を丸くして驚いた。



「ドルガ陛下だって?さっきの人間みたいな野郎がか?ヴォホホッ、ゾジョ、さてはまたウソだな?あの野郎は弱すぎだ。オレより弱そうだった。有り得ないだろ」



ボジョは大きな肩を震わせて笑い飛ばす。連動してボジョに生えてる葉が揺れる。



「ボジョ、違うぞ。強さじゃなくてポジションなんだ。ほら、人間達の中には弱い癖にボスになってた奴も居ただろ。あれと一緒だ」



「ハッ!人間ってのは本当にバカだな。何で弱い野郎が偉いんだ。ゾジョ、教えてくれ。」



ボジョは呆れた顔でゾジョに聞いた。



「さあな。そこまでは知らねぇ、気にしねぇからな。だがその弱い神がよ、ボジョ、何でこの暗黒城(ドゥームキャッスル)に連れて来られたのかってのは気にならねぇか?」



「そうだな、気になるな。ゾジョ、何でだ?」



ボジョが興味を含んだ顔でこちらを見ていることに満足してゾジョは醜悪に満ちた笑みで答えた。



「バラバラに切り刻んで人間のケツに突っ込むんだ。ええと、確か…ソーセージだ。んで、ソーセージ人間をまたバラバラに切り刻んで別の人間のケツに突っ込んでを繰り返して、最後は串に刺して城の皆が食うんだ」



「「ヴォホホホホッ!」」



2人でバカ笑いし、ゾジョとボジョの野太い声は、暗黒城(ドゥームキャッスル)の周りに渦巻く暗黒の冷気が放つ音に巻き取られて消えていった。



ガダァァァァン



突如として轟音がゾジョとボジョの後ろから鳴り響いた。2人は驚きながら振り向くと、自分たちが守っているはずの門が強い勢いで開けられていたのだった。

ゾジョとボジョは何事かと城内を門の外から睨みつけると、ある人物が目に留まり、慌てて持ち場に戻って片膝をつく。



その人物は音も無く物凄い速さでゾジョとボジョの傍まで来ると、ピタリと止まる。



綺麗に整った美女の顔、、青い目、美しく長い髪は薄く青い銀の髪色。肌もきめ細やかで白く美しい。だが首より下は化け物だ。胴体は青い糸によってグルグル巻きされていて、(まゆ)となっており繭からは体の前でクロスさせたであろう長い腕が出ている。

肩であろう左右の位置から繭を突き破って角が生え、繭の下からは、木の根の様な触手が沢山出ている。全部で12本だ。花びらに似た羽を左右に3枚ずつ背中に持っていて、空中に浮いている。繭の中心にはコアがあり心臓の様に脈打っては青く光っている。

エメラルド色をした複雑な天力式が書かれたペンダントを首に着けていて、クロスしている手には見事な装飾の指輪が2つあり、のっぺらぼうの顔をした宝石が指輪にはめられている。



「良かったわ。まだお越しになられていないみたいね」



急いで来た人物は、現状に安心して少しホッとした表情になった。



「こ、これはピナムー女王様!ご、ご帰還でございましょうか」



片膝をついたゾジョが急いでいる様子のピナムーを伺う。彼女は《獄氷の間》の南部を治める女王であり、今日は暗黒城(ドゥームキャッスル)に神を連れてやって来ていたのだが、家来も従えずに帰るなどゾジョには不思議に思えた。



「帰るわけないでしょ。そんな事をしたら死よりも恐ろしい拷問を受けて確実に殺されるもの」



ピナムーは冷たい目でゾジョを睨む。



「も、申し訳ございません女王様」



慌ててゾジョは謝罪する。



「はぁ、アンタ達は黙ってそのままじっとしてなさい。もうすぐ──」



ピナムーは言葉を切り、素早く全ての触手を綺麗に折りたたんで頭を垂れた。



地獄に住まう者にとってそれは圧倒的力そのものだ。こんな地獄など容易く飲み込むことが出来るであろう底の見えない巨大な力の塊が、銀色の氷面へと出現した。

白と黒と青の硬質化した皮膚を持ち、金に光る筋が神々しく全身に走る、地獄の頂点、リツが姿を現した。



「お待ちしておりました偉大なるリツ様。ご案内致します、どうぞこちらに」



「急いでいる。早くしろ」



「は、はいっ承知致しました偉大なるリツ様」



ピナムーは大慌てでリツと共に城内へと入って行った。



ゾジョとボジョはというと、最早伝説的な存在となっているリツを目の当たりにして、畏怖と感激のあまり震えていたのだった。




♦♦♦♦♦



ロウソクの火で照らされた程度の明るさしかないこの部屋は、悪趣味な物が目立つ。尖った針類や多種多様な小型の刃物が並ぶ棚、ノコギリ状の大きな剣が飾ってあり、部屋の装飾にはいかつい骸骨が登場する。

部屋の中央には革のベルトで目と口を隠されたダークブロンドの髪をした中年男性が裸で椅子に縛り付けられている。

入り口付近にピナムーが立ち、中年男性の近くにリツとドルガが立っていた。



リツの顔は宝を前にした海賊の様に歪んだ喜びを見せている。

リツはしゃがんで中年男性に天力を施した。対象の記憶情報を取得する"オートハッキング"を発動したのだ。



待ちに待ったこの時がやって来た。ずっと探していた、神に関する情報が今手に入る。この時の為にわざわざ配下をワラワラ生み出し一部の者には三元力の鍛え方まで仕込んだのだ。そしてとうとう、リツの力を持ってしても抜け出せないこの地獄から脱出し、オーゼスの所へ行く何らかの手掛かりが今ここに。



男の情報が入ってくる。名前はモリスか。どうでも良い。なるほど、こいつは神同士から生まれた神だ。



「おおっ!」



リツから感嘆の声が上がる。ドルガとピナムーは一瞬ピクリと反応したが、リツの言葉を待ってジッとしたままだ。



ついに神の能力についての情報が入って来た。神には6つの階級が存在し、アルファ~ゼータの順で階級が上がって行くらしい。つまりアルファ級が一番低く、ゼータ級が一番高い。モリスはベータ級だ。下から2番目になる。

なるほど、神達は生まれてから早くにおよその能力が決まるらしい。



(神達は鍛えないのか、それとも三元力と別の力なのか)



そして神の力の詳細情報が来た。



「フハハハハ!!」



突如、リツの高笑いが部屋に響いた。ドルガとピナムーはまた一瞬ピクリと反応したが、ジッとしたまま姿勢を崩さない。



神達は間違いなく天力を使っている。三元力だった。神は三元力以外の能力を使っていなかった。そして同時に神達の力量が見えた。



「カス同然だ」



モリスに関わる神は最高位でもデルタ級の神までだったが、デルタ級の神などリツが生み出した最低位の存在ヘルボーンズと同じくらいの力量だった。

だが他の上位階級の力量が分からない。

神達の仕事は思っていた通り、現世の管理者だ。現世の各地へ配属され、点在する神界とを行き来する生活だった。そして予想通り、下界は無数にある。これは地獄に落ちてくる罪人の世界にバラつきがあったため予想していたが、やはりそうだった。

モリスは下界でトラブルを起こして邪神になり、他の神に殺されたらしい。

つまり、神でも死ぬことがわかった。



「なにっ!」



ドルガとピナムーはまた一瞬ピクリとした。



オーゼスの情報が来た。だが、神達の頂点であること、オーゼスだけオメガ級という特別階級に位置していること、最上位の神達としか会わないということしか分からなかった。

これじゃ肝心のオーゼス自体の力量が分からない。

そして地獄の情報が入って来る。

地獄は冥界というものの括りらしい。地獄以外にも冥界には世界があるそうで、天国、死界、ヴァルハラ、そして地獄だ。

神達は冥界のことを便所か何かだと思っているらしく、とにかく冥界を嫌っているらしかった。そのせいで冥界の情報は酷く少なかった。



「もうこの男に用は無い。消して構わない」



ドルガとピナムーはリツの言葉を聞き、ここで初めて姿勢を緩めたのだった。



「畏まりました。リツ様」



ドルガがリツに頭を下げる。



「よくやったドルガ、そして発見地を治めるピナムー、後で褒美にアイテムをやろう。だが少し待て。コイツから抜き出した情報の中で至急試しておかなければならないことがあるんだ」



「ありがとうございます!リツ様の寛大なお心、感謝の念に堪えません」



「フフフ、ドルガ、ピナムー、お前たちは天国に興味はあるか」



そう聞いたリツの顔は残忍な表情が刻まれていた。



睡眠時間ってどうして7時間も必要なんだろう。

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