6話 吉報
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拙い文ですが良ければ読んで頂けると幸いです。
感想・ご指摘お待ちしております。
※平日は仕事なので次話投稿しないと思います。(って人気無いのに言っても感)
──配下誕生より200万年程経過したある日、リツはいつも通りに天空の巨城で三元力の鍛錬を行っていた。200万年前にリツの怒りで天空の巨城は一度消え去ったのだが、天力で作り直した。
200万年程の間にリツは無数の配下を生み出したが、天空の巨城にはリツしか居ない。正確には自動防衛と案内役の石像が居るのだが、奴らは生物ではないのでカウントしない。
生み出した無数の配下達は忠実に地獄で働いてくれている。彼らの仕事は天空の巨城には無いのだ。
リツは「ふぅ」と息を吐き、自身の魂力を圧縮させようとしたその時、何処か別世界からリツを呼ぶ感覚が伝わって来た。
これはリツが天力で作り出した連絡用の仮想空間"アナザーリアリティ"に居るリツの分体に配下がコンタクトを取った合図だ。今日は定期報告の日じゃない。何かあったらしい。。
折角、気合を入れて鍛錬に励もうと思っていた所を邪魔されてリツは不機嫌になった。
「しょうもない事だったら許さねぇぞ」
リツはイライラしながら"アナザーリアリティ"にアクセスした。
真っ暗な世界、その中に光り輝く長テーブルと、4脚の椅子が置かれており、椅子には4人満席だった。椅子は3対1の位置で配置され、沈黙を保っていた1席側に座るリツのアバターが生気を帯びて動き出した。リツのアバターはパーカーのフードを深く被りとジーンズ姿の人間で、過去のリツそのものだ。
リツが動き出したのことに反応して3人のアバターが席を立って深々とリツに頭を垂れる。3人は最初に生み出されたドルガ、ライジェス、マフナと名付けた化け物で、今は三獄の間でそれぞれ皇帝に位置する最高責任者だ。3人は人間の姿をしたアバターをしている。
ドルガのアバターは長いオールバックの黒髪で赤い目と黒い唇、両耳に大量のピアスをしており、鼻だけ覆うように黒いマスクを着けているが、先が尖っている。黒いワイシャツに黒いベストを着ていて、ベストのボタンが銀色に光り、銀色のネクタイ、刺々しいファーの付いたマントを羽織っている。
ボトムスは黒のレザー、靴も黒いレースアップブーツ。
ライジェスのアバターは髪型は横が短めだが、かなりボリュームのあるトップがリーゼント風に逆立っている。コームオーバースタイル。インナー無しで、皮を剥いたオレンジみたいな見た目のベストを着ている。ただし、色は黄緑色。ジーパンはダークインディゴ色。爪痕のような色むらがある。レースアップのレザースニーカーを履いている。
マフナのアバターは長い髪の女性で、肌以外全身の右側が黒色、左が白色になっていてオッドアイ。黒と白い瞳。ポイントレースタイトドレスで、胸元、七分袖、背中上部、腰がレース部分。ティアラと小さな王冠が頭に乗っている。
「座れ。それで?俺を呼び出した理由を聞こうか。ああ、挨拶など要らん」
主君の声から微細な怒りを感じ取った3人の配下は恐れ慄きながらぎこちなく席に着いた。重々しい空気の中、ドルガが唇を震わせながら意を決して口を開いた。
「こ、この様な時刻にり、リツ様の大変貴重なお時間を頂戴致しましたこと、深くお詫びを申し上げます!何卒ご容赦を──」
「早く要件を言え」
「は、はいぃ!簡潔に申し上げますと、神が落ちて来ました」
ガタッというけたたましい音を立てて勢いよくリツが椅子から立ち上がり、3人の配下はビクッとした。リツは勢いでフードが脱げ落ちつつ、ドルガに掴みかかった。
「何処だ!」
怒りに満ちたリツの声と眼にドルガは怯み上がり、顔は恐怖でクシャクシャになった。
「わ、私の居城に捕らえています。」
「《獄氷の間》の暗黒城か」
そう言うとリツのアバターは生気を失い、機械的な動きで自席へ着くと、目を閉じて動かなくなった。残された3人の配下は暫く間恐怖で固まると、ドルガが慌てて"アナザーリアリティ"を退出した。
「オレの所に神が落ちて来なくて良かったぜ」
リツが居なくなったことでライジェスが落ち着きを取り戻してそう言うと、マフナがそれに答えた。
「随分お怒りのご様子でした」
緊張の糸が緩んだせいか、ライジェスの口は軽くなる。
「あの方は何時も怒ってっけどな」
マフナは眉を潜めて呟いた。
「・・・今の会話もご主人様に聞こえてるって知ってて言ってる?」
「えぇ!?も、申し訳ございませんリツ様!!心にもその様なことは──」
アクセスが切断されたリツのアバターに土下座しているライジェスを見下ろしてマフナはクスクス笑いだした。
「そんな訳ないでしょ。冗談」
嘘だと分かり土下座を止めて立ち上がったライジェスは怒り出した。
「このクソ女!調子に乗りやがって!あの方からアイテム騙し取ったの言うぞコラ!」
マフナは痛いところを突かれ一瞬面食らったが、すぐに余裕を取り戻す。
「フン、言ってごらんなさいよ。貴方がご主人様のお城に居る石像壊したこと言うから」
「なあっ!?それは・・・クソッ!!」
お互いにらみ合ったところで、マフナが呆れて首を振る。
「まあ、今のもご主人様には聞こえて無いんだからお互い忘れることにしましょ」
「チッ、しゃあねえか」
ライジェスは騙された分、不満だったが、そろそろ2人共"アナザーリアリティ"から退出することにした。
2人は正しく席に座りなおしてアクセスを切断しようとしたが、テーブルの裏から竜の顔をしたメタリックなムカデが這い出てきてテーブルの上に止まるのを見て2人の顔は青ざめた。
「話は全てマスターに報告しておく」
ムカデはリツの自立思考型アイテムだ。まさか"アナザーリアリティ"に居るとは2人は思わなかった。
2人揃って素早く綺麗な土下座を見せたのだった。
何も無い場所ってあるのかな。