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 5話  天空の巨城

訪問ありがとうございます。


拙い文ですが良ければ読んで頂けると幸いです。


感想・ご指摘・ご不満など、お待ちしております。

上空に浮かぶリツは考えた末、まず最初は自身が生活する城を作る事にした。

地獄を完全に支配、管理することにしたので、家というより城が必要だった。

地獄では罪人がランダムに落ちてくるため、地上に作ると屋根に落ちてきそうで面倒だと考え、地下か空に作ることにした。



「どうしようか。地下だと景色がなぁ。よし、ここは空に作るべきだな。」



リツから白い閃光が発せられた。今や12(メートル)級の化け物ボディの周りに幾つもの流動する輝きが現れた。筋の様でいて、細い煙であったり、揺らめく帯、波などが荒ぶっている。

しかしそれは一瞬の事で、シュワッという刹那の音と共に輝きが消え、上空には突如として白い巨城が浮かんでいた。まさに天上の力、天力(てんりき)を極めし者の成せる技だ。



「時間が惜しい、早速チェックだ」



地獄に落ちた全罪人から自動で全ての記憶を抜き取る天力"オートハッキング"を切っているため、もたもたしていると重要な情報を逃す危険性があった。罪人は放っておいても獄炎などの、地獄の所業ですぐ消えてしまうのだ。

リツはすぐに確認作業に入った。



外から見ると、巨大な石の台が白い巨城を載せているといった感じだ。上には空一面に灰色の雲が覆い尽くしており不定期に光ったりして不気味だし、勿論下は地獄絵図、間に挟まれた天空の巨城は砂漠のオアシスみたいに思えて異様だった。

台は逆ピラミッドの形状で、下は灰色の岩が幾つもひしめき合い、氷柱(つらら)みたいに鋭く伸びていて、下から来る者を拒むかの様だった。

巨大な城は白く、神秘的で美しい。城は3つの建造物が身を寄せ合っているような構造だ。真ん中の建造物が一番高く、逆ピラミッドの台の上面から尖った屋根の先まで300m程もある。真ん中に比べて左右の建物は高さ250m程で抑え気味に感じるが、全体として城が山の様に見え、威厳に満ちた印象となっている。

これだけの高さだが、真ん中の建物でさえ5階しかない。リツが12mもあるからだ。巨城を囲むように、四隅に尖った塔が建てられており、高さ150m程もある。



「やはり古風な城が似合うな。SFチックにしても良かったがそれだと俺が浮いてしまう。外観はこれで良しとしよう。気に入らなければ後からいくらでも変えられる。この様なことに(こだわ)ってもしょうがない」



リツはぐるりと巨城の周りを飛ぶと、小さく頷いて逆ピラミッドの台上に降り立った。下は白い石畳で出来ており、平らに整備されている。物が転がって落ちるのを防ぐため、逆ピラミッドの淵には3m程の城壁で囲ってある。

真ん中の高い建造物の正面に城門が1つあり、城への入り口はそこだけだ。金属のような思い城門を開いて城内に入ると、高さ60m奥行120mほどの広いエントランスフロアが見え、左右の建造物に入るルートが見える。

真ん中の建造物の1階は壁で半分に区切られていて、城門側がエントランスフロア、後ろが王座の間になっている。リツはエントランスフロアの正面にある巨大な扉を開いて王座の間に入った。

奥には段差の上に王座が置かれていて、扉から王座まで上品な赤い絨毯が敷かれている。リツは豪華で威厳に満ちた赤と金の王座に座り、感触を確かめた。



「おぉ、良い感じだな」



壁と床は美しい白さを誇り、繊細で緻密なレリーフは金色に輝いて壁を飾っている。部屋の眺めも座り心地も十分だった。



「おっと、ゆっくりしては居られないな」



リツは急いで自作の各部屋を見て回った。三元力の訓練部屋、自室、拷問部屋など、一通り全ての部屋を見て回り巨城を出た。



「やれやれ、作るより確認する方が時間が掛かるとは何とも妙な気分だ」



そう不満を漏らすと、リツは巨城前の広場で僕を生み出す準備に取り掛かった。どうせなら出来るだけ高位の存在が望ましい。リツは魂力のリミットを解除した。途端、リツが輝きだし、黄金に光る風がリツの周囲を取り囲んだ。そしてリツは再び浮いた。広場の地面から2メートル程浮かんだぐらいだった。

リツの魂力が膨大過ぎて身体からハミ出てしまったせいで常に浮かぶようになってしまったのだ。この状態からさらに獄意を解放する。黄金の風が赤黒く変色し、バチバチと稲妻のようなエネルギーがリツの周りを走り回る。リツの三元力全てが激昂し、マグマの様に沸騰する。



「ウラァァ!!」



力に身を任せて叫ぶと、リツの目元、鼻筋、耳が真紅に変色し、筋肉が盛り上がり、身体が逆三角形に肥大した。



「全力で行く。まずは3人だ」



リツは(しもべ)のイメージを天力の感覚に落とし込み、具現化させた。一瞬、天空の巨城を覆い尽くす暗黒の閃光が発せられた後、広場に3体の化け物が誕生した。



リツは獄意と魂力を普段に戻して、3体を観察した。リツの正面には8m程の男が立っている。勿論人間じゃない。

オールバックの長髪で、髪の色は黒。肌は生気の無い灰色。額の上部におぞましい二本の角が生え、上へ曲がって伸びている。L字型だ。尖った耳が4つ、片方2つあり、上にピンと立った耳と、横に投げ出された耳がある。右腕が1本、左腕が3本もあり、その分、胴長で右手が巨大だ。

さらに右腕だけ黒い。胸から肩に不気味な模様があり、みぞおちから下は硬い装甲質の皮膚になっている。

堀の深い冷酷な顔立ちだ。



右側には10m程の巨大な化け物が居た。

ティラノサウルスみたいな顔、肌は黄色と茶色の迷彩チック。頭上に2本の角があり、後ろに向かって伸びている。耳は真後ろに尖って伸び、紫のモヒカンをしていて、モヒカンが背中まで続いている。胴体は縦に裂けた口のようになっていて、胴に生えた牙のような触手のような物が噛み合ったり開いたりしている。触手が開くと、稲妻のようなエナジーの塊が見える。

とてつもなく上体の胴体がデカい。それにつられて首も太い。足は太く、4つ足。上に棘の付いた尻尾がある。下半身の背中に翼があり、大きい。



左側には6m程の女だ。

神々しいような、緻密で豪華なレリーフが施された金色の円盤を背に持っている。円盤には左右に人間のレリーフが施されていて、左が男性右が女性、それぞれ片腕のみ。左右の人間レリーフの下半身は繋がっているが、右側が本体の様だ。左右のレリーフで色が違い、左が白色で右が黒。黒が本体。黒の人間の頭には角が2本生えている。

円盤を後ろから見ると、円盤の中央に髑髏がある。洪水の涙を流している彫刻となっている。本体は聖母のような彫刻風の顔だ。6枚の翼があり、これも左右で白と黒に色分けされている。ローブを着ているような彫刻。



(全く設計通りじゃないな。)



これは予想していたことではあるが、獄意を込めると力が増す代わりに外見や能力が酷くいかつくなる。3体からは期待以上の力を感じ取れたし、良い働きが期待出来そうだから気にしないが。



リツは忠実なマシンを設計しなかった。それだと飽きてしまいそうだから意思のある個体にした。3体がどう反応するか少し楽しみだ。



「気分はどうだ?」



こちらから3体に投げかけてみた。すると暫くして正面の長い黒髪をした男が反応した。



「誰に言っているのだ?なぜお前に答える必要がある。お前は誰だ」



長い黒髪をした男は胡散臭そうな顔でリツを睨んでいる。



(とりあえず会話が出来る奴が1人はいるらしいな。上出来だ。)



「そうだ、説明がまだだったな。俺はリツだ。君たち3人は俺が生み出したんだ。手伝って欲しいことがあってね。あー、名前が無いと不便だな。それじゃあ─、正面の君はドルガ、右の大きな君はライジェス、左の銅像っぽい君はマフナとそう呼ぶことにしよう」



リツが必死にその場で考えた名前を伝えている最中に、3体は背を向けて勝手に歩き始めた。



(チィ、この急いでいる時にこいつら!)



「オイ!何処行くんだお前ら!」



リツが呼び止めようとするが、3体は無視して歩き続ける。城壁付近でドルガが止まり、リツに振り向いた。



「お前こそなぜそこに居るのだ?私は自由だ。行きたいところに行く。お前に行先など言う必要は無い」



ドルガは馬鹿を見ているかのような顔でそう吐き捨て、また背を向けて歩き始める。マフナはクスクス笑い、ライジェスは完全に無視して翼をはためかせ飛び立とうとしている。



「ゴラ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァー!!!!」



リツの咆哮と共に天空の巨城を覆い尽くすドス黒い閃光が発せられた後、数㎞に及ぶ爆発が天空城諸共3体を吹き飛ばした。



リツの沸点は蜂より低いのだ。


熱いより寒い方が怖い。何でだろう。

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