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女の子は、考える。
彼は飛び乗るように電車に乗り、行ってしまった。
手元に残った紙を見ると、どうやら彼の名刺のようだ。
名前と会社名が書いてある。こういう名前なんだ。
裏を返すと、慌てて書いたのだろうか、歪んだ字で連絡先が書いてあった。
「えっ!?」
驚いて、名刺を何度も見返す。
たしかに、書いてある。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
それから、会社に着いても、仕事をしていても、帰りの電車でも。
丸一日、彼のことしか考えていなかった。
これって連絡してもいいってことだよね。
電話をする勇気はなくて、メッセージを考える。
何度も打っては消し、打っては消しを繰り返していたら、夜になってしまった。
今日中に連絡しないと、もう連絡する勇気が出ない気がして、諦めて送信ボタンを押す。
これで良かったかな。
変なこと打ってないかな。
返事来るかな。
土曜日が終わる。
土曜日限定だった私の恋は、土曜日が終わっても続く予感がした。