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女の子は、ためらう。
思い切ったことをしてしまった。
迷惑がっていないだろうか。
そう思ったけれど、彼の顔を見ることが出来なくて、視線を彼に戻すことが出来ない。
早く来い。
早く来い。
早く来い。
電車に向かって祈り続ける。
いつものように人が多い都会の駅なのに、この世に二人しかいないみたい。
お礼、来週渡せばいいか。
なにをあげたらいいだろう。
紙に書いた連絡先、は重いよねやっぱり。
彼はなにが好きなんだろう。
寝ている彼しか見たことがないから、なにを好きなのかも知らない。
やっぱり、迷惑だったかな。
そう思っていると、電車がホームに入って来た。
彼との時間も、もう終わり。
また来週。あの時間に。
振り返って、電車に乗り込む彼を見つめると、不意に彼と視線があった。
「これ…!」
彼が差し出してきたのは、名刺サイズの小さな紙だった。