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女の子は、本で隠す。
少しくらい、見てもいいかな。
私は本を少し自分の顔目線まで上げて、死角を作る。
この本越しにこっそり見れば、彼はきっと気づかないだろう。
疲れてそうだし、眠ってるし。
勇気を持って、彼に視線を移す。
「「あっ」」
彼と目が合って、慌てて視線を本に戻した。
心臓の音が、スピーカーを通して鳴っているように、私の中に響き渡る。
なんで目が合うの、寝てたんじゃないの。
それより、今相手も、「あっ」って言わなかった?
けれど、もう一度目を合わせる勇気はなくて、本で顔を隠したまま、私は顔を真っ赤にした。
恥ずかしくて、泣きそう。
早く駅に着け。
幸い、降りる駅は私が先だ。
そのまま彼の方を見ないようにして、どうにか時間をやり過ごす。
しばらくして目的の駅に着いて、私は慌てて席を立つ。
電車のドアが開いて、私は電車を降りた。
また来週まで、恋はお休み。
小さなため息を吐いて、改札に向かって歩き出す。
「あの、これっ!」
振り向くとそこには、彼が息を切らせて立っていた。