女の子は、恋をしている。
土曜日になると、私は恋をする。
都会に出てきて二年。
私の地元とは格段に違う電車の駅のホーム。
いつ行っても人が多くて、いくつもある路線は、私はいまだに慣れることが出来ない。
改札内に入っても、上手く人の流れに乗れなくて、自分の路線のホームにたどり着くのに数分かかる。
二年前よりは上手くなった気がするけど、それでも得意ではない。
自分は都会に向いているんだろうか。
そんなことを考えながら、駅で電車を待っていると、いつもの電車がホームに入って来た。
扉が開いていつものように乗り込む。
あ、いた。
いつもの電車。いつもの車両。いつもの指定席。
彼は名前も知らない、男の人。
いくつなのかも知らない、名前も知らない。
でも、土曜日の平日よりは空いてるこの電車に毎週必ず、乗っている。
仕事なのだろうか。毎週彼はスーツを着ている。
気だるそうに座席にもたれ掛かっていつも眠っている。
私もこっそり、彼の向かいに座る。
ここが私の指定席。
私は本を開き、小説の続きを読み始める。
と言いたいところだけれど、文字をさらっているだけで、内容なんてちっとも頭に入って来ない。
これって、危ない発想なのかな。
私は彼に恋をしている。