回る世界
「うっ、ぶ」
隅っこの方で、うずくまる私。
無事に縦穴を降りきったはいいが、回りすぎて気持ちが悪い。
「ジョナマリア!」わらわらと無数の足音が近づいてくる。
ガヤガヤと始まる、楽しそうな会話。
「みんな、久しぶりっ」「カルファルファがニヤニヤしていたから何かと思ったよ」「大源泉の様子はどう?」「ちょうどジョナマリアに見てもらいたい所が……」「あつ、でも……」「彼のことは任せな」「うん、お願いカルファ姉さん」
ぐるぐる回る世界。隅でうずくまったままの私には当然見えないが、どうやらジョナマリアは無事に一族の皆と再会したようだ。
──依頼は無事に完了かな。うっぷ。
折角の依頼達成の場面を見る余裕もなく。きっとジョナマリアさんは素敵な笑顔をしているのだろうと思いつつ。
頭は上げられない。自分の三半規管が憎らしい。
そこへ近づいてくる足音。
「クウさん、大丈夫かい?」カルファルファの声。
話すのも辛い私は手だけ振ってみる。
「……例のポーションは、もうないの?」
はっとなる私。
ぐらんぐらんする頭を何とかなだめつつ、スマホのリザルト画面からポーションは取り出す。画面を見るのすら気持ち悪い。
手が滑る。
「おっと」とカルファルファがキャッチ。そのまま蓋をあけ、口元まで持ってきてくれる。
とりあえず一口、口に含む。
回り続けていた世界が一気に鮮明に。
「あー。たすかったー! ポーションってこんなことにも効くのか。教えてくれてありがとうございます」
「薦めておいて言うのもなんだけど、かなり勿体ない使い方だからね」
やれやれと肩をすくめるカルファルファ。
「さて、どうする? 休憩するか。それとも、ジョナマリアの勇姿を見に行ってみるかい?」
「ええ、当然っ。行きましょう」
さっきまでの死にそうな気分はどこへやら。どうやらジョナマリアの新たな一面が見れるかもという期待で、私は足取りも軽くカルファルファのあとを追った。




