神話とガチャ
「──そして、薬指からは私たち、魔女の一族が産み出されました。薬指は心臓に繋がると云われております。これから向かう大源泉はかつて父神の心臓だった物だと信じられているんです。私たち魔女の一族が大源泉の管理、そして各地の源泉の管理を任されているのは、そういう謂れがあると言われております」
と語るジョナマリア。
私は疑問に思った事をたずねる。
「えっと、それ以外の人たちは?」
「はい、只人たる人類は、末弟の民と呼ばれております。彼らは最後に父神の小指から産まれたそうです」
「魔女と、それ以外の人たちは、種族が違うんですか……」と、呟く私。大源泉の由来ぐらいまでは興味深く聞けていたジョナマリアの話。しかし、魔女というのが職業や役職名ではなく、種族をあらわす、というのはなかなかに衝撃的な事実だった。
「魔女というのは、只人? 末弟の民の人間はなれないのですか?」
「そうですね。もちろん、魔女は女性だけです。でも、魔女の父親はだいたい皆、只人ですよ。生まれてきた子供が女の子だと魔女、男の子であれば、父親の種族として育てられますね。私の父も只人でした」
「そうなんですねっ」と思わず弾む私の声。しかし、そこで自分がこの世界の末弟の民と呼ばれる存在と、どれぐらい遺伝子的に近しいかという疑問が首をもたげる。
(見た目は全く変わらない、同じ人類だと思うんだけど……。いやまてよ、魔女は他種族と混じりあって来たってことだよね? 逆に私にも────)
と、少し希望の光があるかも、と思った時だった。
急にスマホが振動する。
久しぶりのことで、思わずピクッとしてしまう。
「どうかされました?」
「いえいえ! 大丈夫です!」
「そうですか。そろそろ、寝ましょうか。明日はいよいよ登山になりますし」
「えぇ、えぇ。そうしましょう!」
と、思わず勢い込んで答えてしまう私。
寝仕度を始めるジョナマリア。
私はそっとスマホを取り出してこっそり確認する。
そこには、こんな文字が表示されていた。
『条件を満たしました。地域限定ガチャが解放されました。
地域限定ガチャ:ある特定の領域内で回せるガチャ。その領域の特性を反映したものが排出される。一度排出されたものはそれ以外のガチャでも排出が解禁される』




