目覚め
「こんだけ日常品があって、テントはないのがな……」
そんなことを愚痴りつつ、私はリザルト画面から次々に夜営に使えそうな物を取り出して行く。
レア度がコモンの日常品の一括放出。
防水シート、薪、各種調味料、調理器具にロープ。
次々に出てくる物品をショウが手際よくさばいていく。
私の出した薪と周囲の漂着物で、簡易的なかまどをあっという間につくると、ショウが私の袖をひく。
「はいはい、火をつけるのね」
私は久しぶりに着火のスキルで火を出すと、ナイフでショウが加工してくれた薪に火をつけようとする。
……なかなかつかない。
「あ、あれ! あったかも」
追加で着火剤をリザルト画面から取り出す。
薪の下にそれを忍ばせ、再び着火スキル。
あっという間に火のついた着火剤から、薪に火がうつる。
ショウが再び私の袖をひく。
指差した先には、焚き火から少し離して地面に敷かれた防水シート。そしてさらに何かを敷くジェスチャーと運ぶ動作。
「何かを敷いて、リスティアを運ぶ? ああ、リスティアが温かいようにしようってことか」私は再びリザルト画面から大量に余っているマントを数枚取り出す。
防水シートの上に敷き、簡単な寝床をこしらえると、ショウと二人でリスティアをそこまで運ぶ。
残りのマントを上からリスティアにかけてあげる。
そうこうするうちに、ディガー達が帰ってくる。二人の手には魚介類らしき物が。
それをショウが受け取りさばいていく。
私の出した鉄串にさすと、焚き火のまわりの地面に突き刺し、焼いていくショウ。
手の空いたディガーとディアナがロープと防水シートで簡単な天幕のような物を設営しはじめる。
『木登り』と『立体起動』スキル持ちのディアナが器用に崖を登り降りし、崖にある突起にロープを結んで行く。
ディガーは土魔法でロープの反対側の端を地面に固定していく。
あっという間に崖から斜め下に何本もロープがはられ、そこに防水シートが掛けられていく。
私はその間に、いいねを百ほど使い、食料限定ノーマルガチャを回す。
「焼き魚だけだと味気ないから何かいいのは……。おっ、これとかどうかな?」
私はリザルト画面から出たばかりのコモンアイテムを取り出すと、ショウに手渡す。
その箱を手に取りじっくりと眺めた後、おもむろに頷くショウ。
私はその様子を見て、使えそうな食材も次々に取り出していく。それに手早くナイフを振るうショウ。
すべてが鍋に投入された頃には日が沈み始めていた。
そしておもむろに箱が開けられ、中身の固形物が鍋に。
一気に漂い出す、芳醇な薫り。
それは、夜のとばりの中、焚き火の熱で掻き立てられたカレーの薫り。
当然、その薫りは近くで寝ていたリスティアの鼻腔もくすぐる。
もぞもぞと動きを見せるリスティア。
そしてくぅーという可愛らしいお腹の音と共に、リスティアは目を覚ました。




