爆風の中から
爆風とその後広がった煙が巨人を覆う中、私は手早く自分のステータスを確認してみる。
(ただ、倒すだけなら焔の民の少女を出せば……。でも、彼女、絶対手加減とか無理だよね。見間違いじゃなきゃ、あの樹の根で出来た巨人のなかに、リスティアのいる容器が取り込まれてた。良くて蒸し焼きになっちゃう)
煙がはれるに従って、樹の根の人造巨人の偉容が再び現れる。
巨人がその手を上げる。先端から、無数の槍状の樹の根が射出。
私たちへ向かってくる。
キミマロの急旋回。
ギリギリの回避。
樹の根の槍が一本、キミマロの背鰭をかすめる。
その槍の生み出す剛風が、私たちの頬を打つ。
(げっ、遠距離攻撃も完備しているのか。どうするどうする! 今なら離脱は出来そうだけど……)
ちらりとディガーの様子を見る。
(あっ、ショウとディアナは?!)
再び放たれる樹の根の槍。
急旋回を続けるキミマロの上で、スマホを確認。
手の中から飛び度しそうになるスマホを何とか保持して、ユニット編成を確認する。
(ディアナもショウも無事だっ。でも、送還出来ないや……。距離が離れすぎていると無理なのか?)
その間にも槍の射出が連続して襲いかかる。
巨人が両手を上げる。
両方から発射される樹の根の槍。
二倍になった槍の物量が徐々にキミマロと乗る私たちをを追い詰める。
掠める槍の本数が一気に増加。
たまらずキミマロが急降下をかける。
一気に近づく外海の海面。
急降下から海面沿いに体を引き起こし、水平旋回へと移行するキミマロ。
その尾びれを追うように、次々に射出されていた樹の根の槍が海面に突き刺さる。
海面を蛇行するように飛ぶキミマロ。
キミマロは、尾びれを海面に叩きつけ、盛大に水しぶきを上げる。飛び散る水しぶきが煙幕がわりとなって、僅かに生まれる余裕。
私はその隙に、焔の民の少女を呼び出す。
海面に広がる魔法陣。
そこから光の玉が飛び出すと、高熱を発しながら人型へと変わっていく。
焔の民の少女が、現れる。
海面に降り立つ彼女。
よく見るとその足元では海水が超高温の熱で沸騰し、小さな水蒸気爆発の様相。
水蒸気爆発の爆風の上をまるで豪華な絨毯の床のような安定感で踏みしめ、焔の民の少女は悠然と海面に佇んでいた。その姿は、まるで炎と爆風を支配する女王のよう。
「防御をお願いっ!」私はそんな彼女に願いを伝える。
その焔で出来た瞳をこちらに向けていた彼女は、ゆっくりと片手を上げる。
その動きにあわせて、海面に炎の壁がそそりたつ。
そこへ突き刺さる巨人から次々に放たれた槍。
それらは炎の壁に当たる直前から火を吹き、あっという間に消し炭となっていく。
私はその影で、スマホのガチャアプリを起動する。




