戦闘を終えて
振り向く白炎と化した少女。見渡す限りの灼熱の焦土を背にして、彼女はこちらへと歩いてくる。
一歩ごとに、城壁にいる私にも、周囲の気温が上がるのがわかる。
焔の民の少女の視線が、私の方を向く。
どうやらこちらへと向かっているらしい。
「や、焼け死ぬってっ」
私は慌ててスマホを取り出す。
焦りすぎて、手がすべる。転移してから一番焦っていると言っても過言ではない。
何とかスマホを取り出すと、ユニット編成画面を呼び出す。
「ほ、焔の民。焔の民……」
スワイプする指がこわばっているのがわかる。血吸コウモリ達の次にユニット表示されているのを見つけると、叩きつけるようにして、収納をタッチする。
熱量を持った白炎だった少女が、ただの光の玉へと変わる。光の粒子に変わるディガー達より明らかに大きいサイズ。
そのまま、光の玉は焦土を飛び越え、私のスマホへと吸い込まれていく。
急速に下がり始める気温に、一息つく。
突然の静寂の中、ふと、視線を感じる。
嫌な予感を感じながらゆっくりと周りを見回す。
そこに居合わせた人々の視線が、全て私の方を向いていた。
畏怖。恐怖。熱狂。嫌悪。憎悪。歓喜。
視線に込められたモノは様々なれど、その全てに、振りきれるほどの感情が宿っている。
視線の圧力に押されるようにして、思わず、よろける。
私は完全にテンパる。何も考えずに、いや、何も考えられないまま、よろけた体勢を立て直そうとして、反動で一歩、踏み出す。
私の一歩に反応したのか、ザザっと音を立てるようにして、人垣が二つに割れる。
私の踏み出した方向が空くように。
思わず踏み出してしまった一歩だったが、これ幸いと、割れた人垣の隙間を一直線に、進む。
幾人もの人間達の声をかけたそうな様子も、完全にテンパった私は気がつかず、そのまま城壁から離れる。
私が立ち去った後の城壁の上では、皆が抑圧されていた感情が爆発するかの如く、口々に大声でがなり立て始める。
幸いなことに、大声で話す人々が多すぎ、少し離れた位置に居て、さらに遠ざかりつつあったわたしには、それはただの騒音としか認識できなかった。
ディガー達も収納し、ふらふらとした足取りで城壁を離れる私は、先ほど通りかかった負傷者が寝かされていた場所を通りかかる。
誰も寝てないのを少し不思議に思いながら通り過ぎようとしたときだった。
まるでぶつかるような勢いで、一人の女性が近づいてくる。
「クウさんっ! 見つけましたっ」
と叫ぶと、その女性が私の両手を握ってきた。
「あのポーション、誰も宅配の依頼なんて出していませんでした。クウさんが提供してくれたんですよね! ものすごい効き目でした。皆すっかり回復して。本当にありがとうございます!」
「あ、ああ。あのときの手当てをしていた……」と私は思い出す。
(そういえば名乗ったっけ。しかし、この短時間で裏取りまでしてるなんて、どんだけ優秀なの、この人)
彼女は、私が大量にポーションを渡した女性だった。




