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109/110

交差

 私の上にのし掛かっていた異界の魔王は元の姿を完全に失い、一体の蟲となる。巨大な、蟲に。


 その闇で出来た体は膨張し続ける。すでに蟲の形すら失い、ぼこぼこと体の各部が病的に膨らんだ六足の何かへと変貌する。

 闇が、私ごと飲み込もうと迫ってくる。


 私はじっとその様子を見つめる。自身の罪の行く先を見極めようと。しかしそこに見えるのは止めどない憎しみと狂気の感情の流れだけ。

 私は一度まぶたを閉じる。身にまとう焔を集め、吐息にのせる。


 再度、今度は決意を込めて、闇を見据える。貯めた息を吐き出そうと口を開く。

 そっと吹き出された吐息。込めた、焔の民の少女の、炎。それはすぐさま業火となり、天へと突き立つ。

 天と地を繋ぐ業火の柱の狭間には、異形の姿となった彼女。

 ぼこぼこと膨らむ先から業火に削られていくその体。


 私は、大地に横たわったまま見える流れのままに、息を微調整する。

 空気に含まれる酸素分子の流れが業火の柱の中が最適になるように。そして生まれでる水分子を熱の力を借り、高速振動させる。その異界の魔王の体を裁断し、より良く燃え盛るように。


彼女の身を覆っていた闇が燃え尽きる。

一瞬だけ現れる、はじめて召喚した時と変わらぬ姿の異界の魔王。片手を伸ばし、何か言いたげな瞳をこちらへと向けてくるも、そのままその体は崩れるようにして灰となり。

業火の柱の巻き起こす風に吹き散らされて、消える。


スマホの画面が0を表示する。

私の身を覆っていた炎が、水が、光となってスマホへと戻っていく。


霊峰の頂上に、静寂が訪れる。


炎が消えたことで、覆われていた私の傷が再びうずき始める。

地面に横になったままに手を伸ばす私。さっきまで彼女が手を伸ばしていた、場所に。

ぐっと、握りしめる。


「無計画なガチャは控えよう……」と呟き、私は痛みでそのまま気を失ってしまった。

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