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街へ

 私は、ゆっくりと冒険者達に近づいて行く。


 だんだんその様子が見えてくる。冒険者達は戦いが終わったのに、手に手に剣や弓などを構えたまま、じっとこちらの方を見てくる。


(あれ、警戒されている?)


 私は少し離れたところで立ち止まると、声をかける。ゴブリン達は私の後ろに並ぶ。


「こんにちは! 旅のものなのですが、近づいてもいいですか?」


「俺はチーム『黎明の嘶き』のカーリットだ。助けてくれたようだな。ありがとう。失礼だが、そちらさんは人間かっ?!」


 冒険者のリーダーらしき人物が答えてくれる。

 私はスキルのお陰で話が通じることに安堵しながら、ゴブリン達を警戒しているのかと思い、答える。


「人間です! 今、この子達をしまいますね。」


 スマホを取り出し、私はゴブリン達を収納する。


 何故かびっくりしている様子の冒険者達。

 彼らは顔を見合せた後、武器を下ろしていく。


 私はそれを見て、普通に話が出来るところまで近づいて行く。その途中、今度は向こうから話しかけてくる。


「なんと、召喚士の方でしたか。改めて助けていただいたこと、お礼を。それだけのお力、さぞや高名な術士の方とお見受けします。お名前をお伺いしても?」


(あ、ヤバい、名前、思い出せないままだった。クウって言うわけにも……。なんて答えよう……)


「名前は……クウと呼んでください。」


 私は思いつかず、ゴブリン達に名乗った名前を名前をそのまま名乗る。

 これが、この世界で私がクウとして生きていくことになった瞬間だった。


「クウ殿ですか。先ほど旅をされているとおっしゃっていましたが、良ければ助けていただいたお礼をさせてください。お急ぎでなければですが。」


 私は名乗った名前を疑われる素振りがなくて安心する。


(なんだか途中から私に対する対応が丁重になっているけど、召喚士とやらは地位が高いのかな。確かに、はたから見たら召喚士の真似事みたいなことをしているけど、このまま黙っていて大丈夫だろうか。)


 私はそんなことを考えながら答える。


「ありがとうございます。どうやら迷ってしまっていたみたいでして、同行させて頂けたら嬉しいです。皆さんはどちらへ?」


「俺たちはドォアテアルの街へ帰る途中です。」


 その時、馬車から一人の男が出てくると、私たちの方へと向かってくる。カーリットが振り向くと、手で示しながらこちらに話しかけてくる。


「あ、紹介します。リック商会のベニートさんです。」


「いやいや、素晴らしい召喚獣達ですね。お陰様で助かりましたよ。」


 恰幅のよい中年の男性がニコニコと笑いながら話しかけてくる。


「いえいえ、当然のことをしたまでです。それに大部分は逃げてしまいましたしね。」


 私が答えると、大袈裟な身ぶりでベニートは答えた。


「なんと、まあ謙遜の美徳もお持ちとは! クウ殿は人徳も兼ね備えているのですね。申し遅れました、わたくしめはリック商会で副会長補佐をしておりますベニートと申します。今後ともよしなにお願いしますね。」


「これはご丁寧に。クウと申します。旅をしているのですが迷ってしまいまして。」


「いやいや、それは大変でしたな。是非、ドォアテアルにある我々の商会にお越しください。歓待させて頂きます!」


「カーリット殿ともそのお話しをさせていただいてたんですよ。是非、同行させて下さい。」


「おお! それでは早速! カーリットさん、盗賊の首級はどうします?」


 ベニートが一歩下がって控えていたカーリットに声をかける。

 カーリットはこちらを気にしながら答える。


「賞金は、かかってはいないだろう。どうにも素人臭かったしな。」


「ふむ、それでは放置でいいですな。」


 どうやら殺した盗賊の処遇の話らしい。 

 私は黙ってそれを見守る。


「ではでは、クウ殿、お手荷物がなければ早速行きましょう。さあ、馬車へどうぞどうぞ。」


 私はベニートに連れられ一緒に馬車に乗り込む。

 そして馬車はドォアテアルの街へと向かって出発した。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ガチャで出たスワタニ語理解(片言)で、()の中に片言と書いてあるのに流暢に喋っているのでスキルの(片言)の部分を消してもいいと思います。
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