酔った勢いでの異世界生活④宿での出来事
壁lー゜)深夜にヒッソリ更新…。
「とりあえず、装備は宿についてからで、アルクの街へ行こう」俺がそう提案して、アルクへと向かった。裕子は俺から装備を受け取ると武器と盾だけ装備して、ローブはアイテムボックスへとしまった。2人ともストレージからのアイテムボックスの使用方法は分かったみたいだ。それにしても、美香の顔色が悪い。「美香、本当に大丈夫か?真っ青だぞ」俺が心配してそう言うと「ちょっと、リアルでのゴブリン退治で気分が悪くて・・・妖精を使ったウインドカッターの魔法で退治したんだけど、ちょっと気持ち悪いかな?慣れないと駄目ってわかってるんだけど、もうちょっと時間が必要かも・・・少し休めば大丈夫だから」俺に聞かれて美香はそう答えた。美香はグロ耐性が無いらしい。裕子は平気そうだが。「じゃあ美香を休ませることも考えてすぐに宿に向かおう」俺がそう言って歩き出すと、2人も俺の後をついてきた。
アルクの街の入り口にたどり着くと2人の門番が声をかけてきた。2人ともいかにも衛兵といったいでたちだ。「お前たち冒険者か?ギルド証を見せろ」衛兵の一人がそう言ったが、俺たちはギルド証をもっていない。「俺たちはこの街でギルドに加入する為に来たので、まだギルド証を持ってないんだ。通行費用が掛かるのなら支払うが」俺がそう言うと、2人の衛兵が俺たちを見た後何かを話し合って、「まあ、怪しい盗賊などの類には見えんし、いいだろう。一人銀貨1枚だ。ギルド加入すれば通行費が免除されるので、直ぐにギルド証を作るんだな。冒険者ギルドは街に入って右に向えば直ぐに分かるだろう。宿を探してるなら、ギルドに向かう途中に、主に冒険者が好んで利用するシルバーラビットって名前の宿屋がある。くれぐれも騒ぎを起こさんようにな」俺たちは衛兵に銀貨1枚ずつを渡し、礼を言って冒険者の宿シルバーラビットへ向かうことにした。
アルクの街並みは、いかにも中世ヨーロッパ系ファンタジーと言った感じの、現代日本には存在しなさそうな外観だった。俺たち3人は共に街並みに見入ってしまった。初めて東京に出向いた田舎者の様に周りを見渡していた。「ん~、ここがリアル版アルクの街か~、壮観だねぇ。ゲームでは何度も来たけど、やっぱりリアルだと違うね。空気がきれいなのかなぁ?」裕子は周りをきょろきょろと見渡しながらそう言った。「工場とか無いし、辺りに森林も多いからね。バーチャルゲームでも空気の美味しさまでは表現出来なかったみたいだね」そんな話をしながら3人は宿屋シルバーラビットに入った。宿に入ると15歳くらいに見える可愛らしい女の子が話しかけてきた「いらっしゃい。シルバーラビットにようこそ。お食事ですか?お泊りですか?」
「とりあえず、3日ほど泊りで、食事付きでお願いできるかな?部屋は2部屋で」俺がそう言うと裕子が「あ、美香と大輔で一緒の部屋使うんだ」と俺の方を見てニヤニヤしながら言った。俺が思わず美香の方を見ると美香の顔は真っ赤だった「いやいや、男女で別に決まってるだろ」と俺が言うと、裕子は「3人で一部屋でも私も平気だけど?」と、美香と俺を交互に見ながら言っていたが「2部屋男女別々で!」と俺が言うと、「はいはい、じゃあ荷物置いたらすぐに食堂で待ち合わせで」と言って、別々の部屋と言う事で納得して3日分の食事込みの宿代を渡した。「お客様は色々複雑な関係なんですね。私はエミリって言います。何か御用があったら気軽に声をかけてね」と、思春期の女の子らしい事を言った後「ここの宿は父と2人で経営してて、父はパーンって言います」と言って部屋へ案内してくれたので、俺達3人もエミリに自己紹介をした。
俺は「ふぅ」と口ずさんで、ベットに腰を下ろした。アイテムボックスがあるので、部屋に荷物を置く必要がない。そして、装備の事を考えた。俺の装備ってかなり目立ってたよな・・・。特に俺の鎧・・・。眩しいほど輝いてる青白い洗練されたデザインの神秘の鎧。ゲームでは、知られてる限り最強の防御力で、物理、魔法ダメージ半減に、時間経過でHP、MP回復、物理、魔法攻撃力2倍、精神攻撃、状態異常、即死無効と言う。最後の敵を倒しに行く装備って感じのチート性能だったりする。効果はともかく、初めの街のアルクでは派手すぎるのが問題だ。2人に渡したローブは、性能はともかく神秘の鎧ほどは目立たないのだけど・・・。そして、アイテムボックスの中を探して、比較的目立たない防具を選んだ。土竜の革鎧だ。この革鎧は茶系の色で、一見その辺の防具に見えなくもない。デザインが凝っているので多少は目立つのだが、防具としての性能は革鎧ではトップクラスで、土攻撃無効、土属性攻撃力2倍だ。俺は、これを着込んで神秘の鎧をアイテムボックスへしまって、食堂へと向かった。
俺が食堂に向かうと、美香と裕子の2人は奥のテーブル席にいた。2人とも俺が渡したローブを着ていたのだが、4人組の冒険者っぽい身なりの男が2人に声をかけているようだった。これは、お約束の展開なのだろうか?俺は「2人ともお待たせ」と、その男たちの後ろから2人に声をかけたら、案の定からまれた。「なんだぁお前は。この子たちは俺たちが先に声かけてんだ。ひっこんでろ!」「大輔・・・」美香と裕子は、すがるような目つきで俺の方を見てる。・・・正直、そのローブ着てて、雷神の小剣と精霊王の杖持ってたら、初めの街の冒険者ぐらい瞬殺だろうとは思うのだが、いかにもチンピラな4人組の強面さんにはすくんでしまったようだ。「えっと、そこの2人は俺の待ち合わせ相手なので、ここは引いてくれないかな?」俺が4人組にそう言うと、男のうち一人が俺の首元に手を伸ばそうとしたので、その右手を素早くつかみひねり上げてやった。「くっ、いてて、離せ!」すると、残りの3人も俺の方を向いて「こいつ、俺たちを【黒い風】のメンバーと知ってて手を出してんのか?」と言ってきた。
「俺たちはさっきこの街に来たばかりなので、君たちが何者かは知らないよ。とりあえず、美香と裕子が嫌がってるので、もう俺は君たちが何者でも容赦するつもりはないよ。ここじゃ店に迷惑なので、外に出ましょう。4人全員まとめて相手してあげるよ」俺がにこやかにそう言って、右手をひねり上げていた男を、そのまま外に連れ出そうとしたら、他の3人も「上等だ!後悔させてやる!」と言って店の前までついてきた。美香と裕子も俺を心配して外についてきた。そして、4人全員が腰に差している剣を抜いた。全員戦士タイプらしい。2人は火の妖精、残る2人は風の妖精を出している。「ぶっ殺してやる!」どうやら、街中にも構わず殺す気で来る気だ。ゲームでは街中は攻撃不可だったのだが、この世界は違うらしい。俺は、あえて妖精は出さずに相手をしてやる事にした。というか、武器も出していない。「君たち4人と初級妖精なら、妖精なしの素手で十分だ。好きにかかって来るといい」
「あの世で後悔させてやる!」そう叫んで、風妖精を使った2人が「ウインドウォール!」と叫んで、俺の左右に風の壁を出して火の妖精の2人が「エンチャントファイヤーソード!」と叫んで剣に炎を宿らせていた。どうやら、風妖精の2人組が俺の左右への動きを封じて、火の妖精の2人が武器を強化させて射程の伸びた炎の剣で仕留めると言う戦術らしい。正直、俺が初期妖精でレベル1で装備も貧弱だったらかなりの脅威的戦術だっただろう。だが、今の俺には、笑みを浮かべられるほど、余裕のある攻撃だった。「準備はいいかな?殺さないように気を付けるけど、死なないでね」俺はそう言って、左右の風の壁に手を伸ばして【壁を消滅させて】4人に向っていった。突然風の壁が消えて驚いた風妖精使いの2人に瞬動で一気に近づき革鎧の上から腹に右拳を入れて、残る2人には蹴りを叩き込んだ。周りにいる人間(野次馬も含む)には俺の一連の動きが理解できた者はいないだろう。2人が同時に倒れ、残る2人が同時に吹っ飛んだのだ。全員起き上がる気配はない。
「とりあえず、かなり手加減したんだけど死んでないみたいで良かった」俺が全員気絶してるだけと言う事に気がつきホッとして呟くと、美香と裕子も別の意味でホッとしていた。