表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/35

第四話 魔神ちゃんも語りたい

 ストレガは反射的にテーブルに飛び上がる。

上方から下方への射撃の方が建物、その他に

被害は少ないのだ。


 どうして感知出来なかった。


その疑問を一瞬で頭から追い出し

攻撃の態勢に移った。


相手は生身、この距離なら5mm程度の

鉛数発で十分。

そう判断し左手首側から手の平付近に装填

射出しようと左手を侵入者に向けて

かざすが撃てない状態になった。


侵入者とストレガの間にヨハンが

割って入って来たのだ。


「お兄ちゃんどいて!そいつ」


「殺すな!兄貴の部下だぞ」


ストレガの脳裏にゼータの怒った顔がよぎる。

力が抜け、ストンとテーブルに尻もちを突き、

力無く挨拶をした。


「いらっしゃいませ。」


ヨハンの影に完全に隠れたゲカイは

顔だけ出すと答える。


「お邪魔します」


飛び散った皿などを皆で片づけた。

その最中にお腹を派手に鳴らすゲカイ。

ヨハンが尋ねると食事をしていないとの事だった。


ストレガはもう一人分を大急ぎで支度した。


がっつくように食事を始めるゲカイ。

ヨハンはその間に彼女を皆に紹介した。


ゲカイ

悪魔側の最高戦力、魔神13将の一人で序列6位。

悪魔は兄貴のように金属粒子から成る義体が

こちらの世界で顕現する際に一般的なのだが

ゲカイは人と同じ体の受肉と呼ばれる珍しいタイプだ。

特殊能力の解除は物理・魔法関係無しに

至近距離なら何でも解除してしまう。

降臨騒ぎでは兄貴に付き従うと言って

ヨハンともう一人の格闘家と共に

バリエアで悪魔退治をしていた。


「この少女が魔神だなんて・・・。」


ヨハンを疑うのではないが

現実を受け入れにくい様子のパウル。


ハンスはこの間とは服装が異なる事に着目していた。


ストレガは、さもありなんと言った様子だった。


ゲカイが食事を終えるのを待ち

ハンスが話を切り出した。


「魔神クラスは魔界へ戻ったのでは・・・。」


切り出したハンスにパウルが

食ってかかる。


「待て、オウベルの話が先だ。」


茶の入った湯飲みを取っ手があるにも関わらず

両手で包む様に持ち、すするゲカイは

ゆっくりと語り出した。


「両方の答えになると思う・・・。」


ゲカイの話を纏めると

魔王のゲートを通過した悪魔は

降臨終了の際に波が引く様に

強制的に魔界へ戻される。

しかし、力の弱い者は波に引かれる力も

弱い為、抗う事が可能だそうだ。


これは神側も同様で

今現在、人間界に残っているのは

下級レッサーと呼ばれる天使・悪魔だ。


13将であるが受肉の為

ゲカイの保有している魔力は弱い

実際に戦闘力は同じ年ごろの女子と変わらないのだ。


「それに私の解除能力も引く波に有効、それと・・・。」


そう言ってハンスが注目した服装

ゲカイはドレスを着ていた。


「アモン様がくれた贈り物が、この時空に

おける私の存在の固定化に役立っている。」


パ「意味が理解できない」

ハ「そろそろクリーニングした方が」

ス「お兄様がプレゼントした・・・。」


反応はそれぞれだった。

ヨハンは無視して続きを促した。


「つまりオーベルも力自体は弱いって事なのか」


コクリと頷くゲカイ。


「ただ、こちらに来たのが一年以上前だとすれば

私が魔都で会ったオーベル、

魔王のゲートを使って来たのは偽物になる。」


「魔王のゲート以外の方法もあると?」


促すパウルに頷いて答えるゲカイ。


「下級悪魔程度なら来れるゲートは

いつでも開く事が可能。本物は

恐らく私と同じ受肉で先に来ていた」


稀ではあるが下級の天使や悪魔は

ダンジョンなどで遭遇の報告例があり

降臨のゲートとは関係無しに

こちらに来れるようだ。


以上から仮説は3つ成る。


仮定1

魔王のゲートで来た。引く波で戻った。

オウベルは人間。


仮定2

魔王のゲートで来た。力が弱い為残っている。

オウベルは無関係な人間。


仮説3

手下を偽装させ魔王のゲートで来させる。

自身は自力ゲートで弱い力で来て

オウベルとして次期帝王に取り着いている。


「3だとすると、かなり状況は悪い」


パウルは珍しく感情的になっていた。

続く説明に皆も凍り付いた。


「バリエア壊滅も知っていた可能性が出てくる」


ヨハンも思い出した。

どういうワケか遠征を急いでいた。

崩壊を知っていたのだとすれば合点がいく


「降臨そのものよりも、その前後に

重点を置いて行動している・・?」


ハンスも考え込んでそう言った。


ヨハンは兄貴が言っていたオーベルの

人物像を思い出す。

力が無いから策に依っている。

元から力が無いなら、魔王のゲートに

頼る利点は無い。

どうせ力が無いのならば制約の少ない

自力ゲートの方が遥かに有利だ。

更に言えば降臨の前後も行動が可能になり

降臨前に仕込みを

降臨後、神も魔王も居なくなった時を

本番として行動するならオーベルを

止める障害はほぼ無いも同じ。


「マズいぜ。ここまで全てオーベルの

計画通りって事になっちまう。」


四大天使も神も、もう居ない。

そして兄貴もだ。


「一度戻ると簡単にこっちに来れない」


飲み終わった湯飲み茶わんをそっとテーブルに

置いてゲカイは言った。


「いずれにせよ。アモン様の憂いを絶ってから

私は帰ります。」


ヨハンにとって心強い言葉だった。

兄貴に続いてまたも悪魔が頼りになってしまうとは

元大司教としては情けない話かもしれない。


「ハンス。我々は戻って勇者にこの話を・・・。」


「そうですね。結婚式どころでは無くなりそうですね」


二人は慌ただしくヨハンの家を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ