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第二十一話 オーベルの目的

「捜索は打ち切った方が良いでしょう」


材木問屋に到着し

途方に暮れているストレガと

ユー達より先に到着した勇者に

合流し、事情を聞いたユーは

そう判断した。


「つくづく後手に回ってしまいますね」


悔しそうなハンスだが、

ユーはこれはある程度仕方が無いと

思っていた。


仕掛ける側には準備と最適なタイミングを

計る事が出来るが

仕掛けられる側はいつだって突然なのだ。


「ここは急ぎベレンに戻り

皇太子ご乱心の御触れを出してしまう

べきでしょうねぇ。権限を奪いましょう」


例えエロルが何処に向かうにしても

首都を固めてしまえば負けは無い。


先にベレンに戻られて好き勝手される事が

最悪の事態だ。


「セドリック王子を迎えに

行くついでにヒタイングの教会にも

そのように根回ししておきます。」


そう申し出るハンスに

ユーは感謝を表明した。


「助かります。急ぎでお願いできますか。」


力強く頷くとハンスは

一台の馬車に要員を招集し始める。

その中に勇者も居た。


ハンスは昼行燈と揶揄される男だが

かの冒険譚でも分かるように

やる時はやる男だ。


残りは領主の館に取って返し

そのままパウルを拾って

急ぎベレンに向けて出発する手筈だ。


「私は冒険者じゃない

言う事聞く義務は無い

このままオーベルを追う」


領主の館に戻るべく

馬車に乗り込もうとする面々だが

ゲカイはそう言って乗り込もうとしなかった。


「俺もだ、防衛戦は聖騎士でいいじゃないっすか」


チャッキーも同意していた。


「協会としてはベレンまで護衛込みの

依頼だぜよ。」


釘を刺すと言うよりは

単純に説明する様子のクロード。


「私はお兄様について行きます。」


ストレガはそう言ってヨハンの傍に控えた。


「じゃ報酬は無しで、ここまでって事で

チーム・アモンは追跡に入るか」


ヨハンはなんでも無い事の様にそう告げると

クロードに握手を求めた。

それに答えるクロード。


「戦力的に大丈夫か?」


ヨハンは

自分達が抜ける事に心配していたが

クロードは余裕だ。


「街道沿いにいくなら問題無いぜよ」


来た時と同じような魔物であれば

ストレガとヨハンがいなくても確かに

クロードと随行している彼のパーティでも

余裕だとヨハンも思っていた。


「森を抜けるより街道を行った

方が速いからな。問題ないか」


「だぜよ。それよりも、あのハンスとか

言う司教と勇者は教会に随行するだろう

その二人がそっちに行けないのが心配ぜよ」


逆に戦力で心配されてしまった。

確かにその二人は大きいが

エロルと聖騎士に対し殲滅戦を仕掛けると

決まったワケでは無い。


「なんとかなるさ。じゃあ達者でな」


教会と冒険者の馬車を見送った後

近くの宿屋に転がり込む

今夜はここで過ごし

明日、準備を整えてから行動だ。


一番近くの宿屋は結局

ヒタイングの冒険者協会だった。

プレートがここでも有効なのは助かった。

現金を消費しなくて済んだ。


ヨハン・チャッキー・ゲカイ

かつてのバリエア悪魔討伐隊に

ストレガが加わった4人だ。


4人は一つのテーブルで夕食を取り

明日からの方針について話し合った。


「探すって言ってもどこ探せばいいんすか」


肉料理にかぶりつきながらチャッキーは言った。

当然の疑問だ。


「領主邸からこの方角の先・・・か」


目的地への途中で乗り換えたと

ヨハンは予想した。


「それは目くらましで、

ここから方角を変えられたら・・・。」


ストレガの疑問は十分有りうる話だ。


「聞き込みしながら行くしかないな

あれだけの人数だ。目撃者無しで

移動は無理だし、メシも食えば

寝もするだろう・・・って

ここのメシ美味いな」


ヨハンは魚料理に驚く

さすが港町だけあって海産物が良い。


「目的地は目星がついている・・・。」


食べ終わって茶をすすりながら

ゲカイは話を始めた。


恐らくここに残ると言い出したときから

目星はついていたのであろうが

食事を優先した様子だ。

皆も茶を飲みながら

ゲカイの続く言葉を待った。


「今回の降臨、、恐らくオーベルは

勝敗などどうでもいいと思っている」


それは何となく理解出来た。

肝心の降臨時に不在なのだ

状況の変化に対応した策を講じられない


その前後に重点を置いた行動だ。


「何しに来たっすか?」


当然の疑問だ。

チャッキーがそう聞いた。


「13将が選出されるに当たって

12の王家それぞれから一人ずつ

選ばれる。主従関係がある者もいる」


ヨハンはババァルを姫と呼んでいた

二人の魔神を思い出す。


「前回の降臨時に帰ってこなかった

魔王がいた。ロスト・・・失われたと

魔界ではそう判断した。そう聞いている」


ここで一回、茶を飲んでから

ゲカイはゆっくりと続きを話した。


「腐敗の魔王・ビルジバイツ。

オーベルはその王家の家臣」


前回の降臨、滅ぼされた王国 セント・ボージは

毒の沼に沈んだ。


「腐敗・・・じゃあ、あの毒の正体は」


ヨハンは城の偵察時

あの足元の嫌な感覚が脳裏に蘇る。


「勝敗など、どうでもいい

人間の支配もどうでもいい

ただ封印された主を救う

その為の人手・・・生贄かも

それでいいなら

今回のオーベルの行動は辻褄が合う」

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