第一章 謎の襲撃
事件も解決し平和な日々が続くが、一台のトラクターヘッドのせいでその日々が崩れる。
「あーねみー。警ら課の俺が、おまえの交通課の手伝いをしなきゃいけないんだよ。」
助手席で小野がぼやいている。
「何でって、うちの課長の命令で、この今のシーズン違反者が多いから仕方ないでしょ。」
と反論しながら、パトカーを走らせるのは、小野の二歳下で後輩の犬上だ。
今は秋の三連休で、ドライブや、ヤンちゃっ子のドリフト競走をするので、紅葉にタイヤを捕られて、事故を起こす人が多いのだ。山の中腹に覆面車がいてナンバーを知らせてくるので、カメラで道をチェックしといて止めるという物である。
[富士201から富士102へ富士201から富士202へ…]
[はい、こちら富士102~…]
[えーただいま、R32スカイラインGT-R、ナンバーは品川・236です。速度超過なので注意してください。]
[了解。注意しておきます。]
ダッシュボード中央のモニターを見ていると、ブォーゥォーンと音を鳴らしながら走ってくるR32が。
「行けっ。」
小野は無邪気に叫ぶと、犬上はアクセルを強く踏み込み小屋の影から飛び出した。
「はーい道の左によって。」
というと、素直に左に寄った。逃げられないように犬上は車内にいたまま、小野は近づいて
「スピード超過ね。わかってた?」
と訪ね、430セドリックのパトカーの後部座席に連れてきた。
「20キロオーバーで罰金は…」
と話そうとしたとき、ガルガルガルグウィーン。爆音を鳴らしてガシャーンとパトカーに巨体がぶつかってきた。
「うわっ!速くでろ!」
小野は叫んでR32の運転手を引きずり出したが、犬上が逃げ遅れた。もう一度巨体は下がると思いっきり下がり、もう一度ぶつかってきた。ガシャガシャというようにパトカーが落ちてゆく。するとそのドアから犬上が落ちて、滑り台を滑るように滑走していった。犬上が大丈夫そうなのを確認した、小野は無線で、
[本部、各移動連絡!大型のトラクターヘッドに襲撃されました。色は白にブルーとレッドのラインが入った物。ナンバーは不明。場所は桜峠の西側中腹。あと、犬上が崖から滑り落ちた模様。救急車の手配よろしくお願いします。]
と伝えた。R32の男にも手伝ってもらい、崖をかるく滑った、犬上も救出した。
そこへ、一緒にネズミ取りをしていた、富士201もやって来た。
「大丈夫ですか?」
來村が訪ねた。
「ええ、まあなんとか。多少流血してますし、足の骨も折れてそうですがね…」
犬上はつらそうな顔をして答えた。
ピーポーピーポー救急車のC10スカイラインバンが近づいてきて停車した。中から代山先生と助手の時雨が降りてきた。
「おいおい大丈夫か?」
代山が犬上に聞いてきた。
「流血と、もしかしたら折れてるカモです。」
と、伝えると、
「担架に乗せて救急車で運ぶよ。あと、止血する準備と、固定具持ってきて。足動かないように固めるから。」
と、白山に話しかけると、犬上を救急車へ運び込んだ。止血と板と包帯で足の固定を済ませると、素早く発車し病院に急行した。
*
「おはようございます。」
出勤した鹿川にみんなが挨拶をする。鹿川も、
「おはよう。」
と返している。今この捜査課は、課長がいないので、部長の鹿川が仕切っている。
鹿川が課長になるという噂もあるのだが…
「カガさん、昨日のトラクターヘッドの件なんですが…」
後藤が声をかける。
「車両の白ベースに赤と青のラインなんですが、ここら辺グループが多くて、色だけでは車両と運転手の割り出しはきついかと…」
気まずそうに後藤が。それに鹿川は、
「取りあえず全部しらみつぶしに当たるか。」
ため息をつくように話す。
「それと、見回りの強化と、護身用の拳銃の所持の強化を頼む。もし狙われているのがうちら(警察)だと困るからな。」
「まあ、一軒一軒探すだけですね。」
滝川が言った。
そしてみんなは捜査に散らばっていった。
*
鹿川は一人スーパーZに乗り込むと、喫茶店ディテクティブに向かった。
チリンチリン鹿川は店内に入るとカウンター席の一番奥に座った。
「いらっしゃい。」
マスターの工藤航兵が出てきた。
「どうも。今日はお願いありまして。ひとまずそれは置いておいて、あれSA22C(サバンナRX-7)はどうしたの?」
どうしようもない質問をした。
「ああ。ちょっと変な奴に追われたせいで、ジャンプしたらフロントやっちゃって、リトラクタブルヘッドライトやらバンパーやらやっちゃって。取りあえず自走で逃げ切ったけれどまあね。」
と、テへッというように工藤が言った。
「あんまり変なことに足突っ込むなよ。」
鹿川かるく注意した。
「それよりカガっちゃんなんか依頼があるんショ?」
「おう、そうそう。赤と青のラインが入ったトラックの運転手で、警官達に恨み持ちそうな人探ってくんねえか?」
「あのな、カガちゃん。話が大雑把すぎるの。それじゃああんたらの捜査と変わりが無いから、もうちょっと情報が貯まったらにしてくれよ。」
工藤が苦い顔で答える。
「ごめん、焦りすぎたな。情報集まったらお願いするよ。」
だよなーという顔で答える鹿川。立ち上がり帰ろうとしたとき、一人店内に入ってきた。
「きたか。」
工藤がにやっとする。入ってきた女性は鹿川に少しビックリする。
「どうも・・・あっ双葉と言います。」
女性は双葉という名前らしい。工藤が、
「彼女は俺の助手だ。探偵のな。F31レパードに乗ってるってよ。」
っと鹿川に紹介をする。
「どうも。鹿川朝来と言います。工藤は小学生の頃からの幼なじみです。これからよろしくね。」
鹿川がさっと紹介をする。
「よろしくお願いします。」
双葉が答える。
「じゃ」と手を上げると鹿川は足早に店内を去って行った。
二人残った店内で工藤は、
「いいのか?本当のこと言わなくて双葉?」
「いいんです。まだ・・・。」
ふたばと呼ばれた女性はそっと答えた。
*
鹿川が警察署に戻ると、昼休憩にみんなが戻っていた。そこへ、
ピロピロリ、ピロピロリ。
電話がなった。
ガチャ
「はい、冨士山署捜査課。」
{どうも模型署の捜査課です。指名手配中の繭山が発見され逮捕しましたので、受け取りに来ていただけるでしょうか。}
「了解です。30分ほどで伺います。ありがとうございます。でわ。」
電話を切ると鹿川はすぐ、
「ワシ、タキ、模型署に繭山受け取りに言ってくれ。」
素早く指示を出すと、はい!っと二人は返事をすると上着を取って捜査課を出て行った。
「何も無いといいが。」
鹿川は不安そうにつぶやいた。
*
鷲田と滝川は模型署に来ていた。
「ではよろしくお願いします。」
繭山を預かると、スカイラインジャパンの後部座席に押し込むと、
ピピピピピ、ピピピピピ。
と無線がなった。
「はい富士301号」
[鹿川だ。なるべく人目の多い所を通るようにな。]
「了解。今から帰ります。」
無線を掛けると、署から連れてきた長山と來村に声をかけた。
「待たせたな。なんかデカ長が、トラクターヘッドには気をつけろってさ。」
と滝川が言うと、覆面パトカーに乗り込むと走り出した。
模型警察署通りから左に曲がり、県道を直進し少し走った後、城山病院通りに入ろうとしたとき、
「工事中か。」
通り全体のアスファルトの引き直しのようだ。
「富士301から本部、富士301から本部。」
[こちら本部どうぞ。]
「城山病院通りが工事中のため、村山通りを通って帰ります。」
[了解。十分注意して帰るように。]
鷲田が右にウィンカーを出し一方通行の道を直進すると、すぐに開けた道に出た。そして、村山通りに入っていく。すると前から爆走してくるトラックが…
鷲田が必死によけるも、リアのバンパーのサイドにガシャン、当てられ一気にスカイラインジャパンは弾き飛ばされた、トラクターヘッドはそのまま直進し、セドリックパトカーも正面から押される。
*
鹿川ガ不安そうに右往左往している。すると、
[トラックに襲撃されました…ガシャン]
突然無線のスピーカーから滝川の声と鉄同士がぶつかり合う鈍い音がした。
「大丈夫か?」
無線で必死に呼びかけるが、反応は無い。スイッチを切り替えると、
「こちら本部、アキ、聞こえるか?」
[はいアキです。]
「タキが襲われたっぽい。おそらく村山通りだろう、至急向かってくれ。」
[了解です。]
中山はサファリ4WDのハンドルを思いっきり切ると、方向転換しアクセルを踏み込んだ。
鹿川は、電話で、
「城山病院ですか?」
{はい。朝来、焦ってどうした。}
医者の代山が聞く。
「やばい、滝川たちが襲われたっぽい。」
{わかった。場所だけ教えてくれ。}
「おそらく村山通りだと思う。警ら課の奴も連れてったから、犯人含めて5人だと思う。」
{わかった。救急車二台回す。状態がわかったら連絡する。}
*
ディーゼルのエンジン音と、サイレンを響かせ、サファリがやって来た。すると、トラクターヘッドがパトカーを弾き飛ばすのをやめ、逃げ出した。救急車も走ってきた。
「おい、アキ、こっちは任せろ、おまえは奴を追え。」
医者の代山が言うと、
「あざっす。すんません。」
と言ってサファリに乗り込むと、サイレンを鳴らし走り去った。
中山は通りを直進すると、トラクターヘッドを発見した。
「止まれ、トラクターヘッド、止まるんだ。」
スピーカーで叫んでみた物の逃げるため、4インチのS&W M29(44マグナム)を取り出し、タイヤにむけて発砲した。
しかし、タイヤにヒットはせず、ナンバープレートにかぶせてあった、カバーが外れた。
「本部応答願います。」
[はい、鹿川だ。]
「今、タキの方は先生に頼みました。いまトラクターヘッド追ってるんですけど、ナンバー照会お願いします。」
[わかった。]
「ナンバーは多摩11 い 92-40です。」
[了解。今から後藤も向かわせる。気をつけろ。]
「了解。」
無線を切ると、前のトラクターヘッドが、右折した。すると、
「ぎゃー」
男の叫び声が聞こえた。中山は、急ブレーキを踏み停車するとそこには血だらけのおとこが倒れていた。
「大丈夫ですか。」
聞いても反応が無い。サファリに戻ると無線で救急車を呼んだ。
*
病院から飛び出し代山は、スカイラインバン救急車に乗り込んで急行した。
現場に着くと、ちょうど中山も来ていたが、犯人が逃げたようなので、
「おい、アキ、こっちは任せろ、おまえは奴を追え。」
声をかけると、
「あざっす。すんません。」
と言ってサファリに乗り込むと、サイレンを鳴らし走り去った。
二台のパトカーが、ぼこぼこになっていた。黒パト車内から、鷲田、滝川、手錠を掛けた奴だから犯人?と、白パトから長山と來村だっけ?を引きずりだし、救急車に乗せると、病院へ急いだ。
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