第1話 プロローグと第一審査
どうも、ぐーのです。他の小説を投稿し始めたのですが、活動報告に書いたようにコレジャナイ感が凄かったので、選択肢として考えてた設定で試験的に投稿してみました。
もう一つの奴と違い、ファンタジーでもゲームっぽさの少ない世界観の予定なので、これをメインに頑張っていこうと思います。
その大きな背中に憧れてを、今後楽しんで読んでいただけたら幸いです。
一条の光がぼくの目の前で弾けた。
今まさにぼくを食べようと飛びかかってきた魔物を飲み込むように。
なにが起こったのかぼくには理解が出来ず、絶対的な死という暗い海のような深い闇を切り裂き、ぼくを救ってくれたそんな光に只々見惚れているだけであった。
「大丈夫かい、僕」
ぼくは忘れないだろう。
死から助かった安堵からか希薄になっていく意識の中、ぼくの目に飛び込んできた大きな背中を――
とても懐かしいい夢を見た。
俺がまだ『ぼく』であった時。俺があの人のようになりたいと思った時の。
「懐かしいな……」
もう10年も前になるのか……俺はあの人のようになれるのだろうか。
「まだ早いけど、行くか」
俺は今日あの人のような勇者になる。
少し肌寒い朝の空気が、緊張し高揚した俺の心を落ち着かせてくれる。
空は未だ薄暗く、街はまだ静まり返っているが、城門前には勇者選考会の参加者が徐々に集まり始めていた。
「強そうな人ばかりだな……」
「いや、見た目だけでたいしたことない奴らばかりだな」
「へ?」
小さく呟いた俺に、誰かが背後でそう言ってきた。
「兄ちゃんも参加者かい?にしては貧相な身体だな、おい」
確かに他の参加者に比べれば華奢な身体だが、少し失礼ではなかろうか。俺だって勇者に憧れて、死にもの狂いで修行してきた身である。
「華奢なのは認めるが、他の奴らに劣る実力じゃない。もちろん、あんたにも」
「ほう。言うじゃねえか。けどこの程度の軽口にキレるようじゃ、まだまだ青いな」
正論だ。このくらい流せないようでは、この先やっていけないだろう。この反省は次にいかそう。
「まあ、いいや。兄ちゃん、なんつう名前だ?俺はゴルド。賞金稼ぎをメインにした冒険者だ」
「ゴルド……ゴルド!?」
「おい、今ゴルドって聞こえなかったか?」
「おいおい、まじかよ。ゴルドってあのB級冒険者の山賊殺しゴルドのことか?」
「そんな一流冒険者が参加したら、俺じゃ受かるわけねえじゃねえかよ」
俺の驚く声が大きかったのか、周りの参加者にも彼の存在が広まってしまった。けど、驚くなというのが無理な話だ。誰かも言っていたが、数少ないB級冒険者であり、彼の名前を知らない者は王都ユーランドにはいないだろう。
「ガハハ!驚きすぎだぜ、兄ちゃん。それに俺より強いんだろ?」
彼は不敵な笑みをそう言った。
「いやまさか、あの冒険者ゴルドだとは思わなかったから……」
「おいおい、なに弱気になってんだ。見た感じ兄ちゃんも俺には劣るだろうが、そこそこやりそうじゃねえか」
「あのゴルドにそう言われると自信が出るよ」
王都でも有数の実力者にそういわれ、上がる頬が抑えられなかった。
「ガハハ!調子が戻ってきたじゃねえか。それより、俺の質問に答えてくれよ」
「ああ、そうだったな。俺はグレス。グレス・ロイルだ」
「グレスか。良い名前じゃねえか。昔の英雄と同じ名だな」
その後、俺はゴイルに冒険者の話などを聞いたりなどしていたが、気づいたら城門前の広場に溢れんばかりの人がいた。
「……にしてもだいぶ集まってきたな。勇者になるからには相応の実力がいるってのによ」
「そんなものだろ。それだけ勇者って肩書を皆欲しいんだろ」
「あ、兄ちゃんもその口か?」
「いや。俺はあの人みたいな勇者になりたいだけだ」
「……へぇ。なるほどねぇ……」
ゴルドの反応に多少の違和感を覚えたが、城門が上がったことで、すぐにそれは消え去った。
「これより勇者の選考会を開始する」
兵士の言葉により、参加者達は一斉に静まりかえった。
いよいよだ。いよいよ始まるんだ。
「参加者を厳選するため、第一審査を行う。第一審査は魔力測定だ」
周囲は、その言葉をきっかけにざわめき始めた。
「静まれ!勇者は魔王を倒すことが目的である。つまり、強力な魔物と幾度も戦う必要がある!ゆえに、実力があろうと微弱な魔力量では話にならん!」
もっともな話である。弱い魔物や盗賊達ならまだしも、強力な相手には魔力による身体強化は必須だ。
「ゆえに!諸君らには、城門をくぐる際に専門の魔道具による検査が行われる。規定量に達しないものは、即刻退参していただく」
その言葉に周囲から反感の言葉が舞った。
「こいつらは何言ってんだか……そんなん当たり前だろうに。C級冒険者に上がる際にも必要とされることだろうに」
ゴルドは呆れた気持ちを抑えずにそう言ったが、おおむね同意だ。C級冒険者の話は初耳だったが。
「ええい、静まれ!文句があるなら帰ってもらうぞ!」
暴言は収まりつつあるが、広場の空気は先ほどよりも落ち着いてきた。
「それでは第一審査を開始する!『我先に』と、他の参加者を押しのけたり、妨害した者は参加資格を剥奪されるものと思え!」
まだ、文句を垂れるものはちらほらいるが、第一審査は順調に始まった。
「そろそろだな。こんなところで落とされるんじゃねえぞ」
「当たり前だ。そっちこそ落とされるなよ」
俺たちは周囲の雰囲気とは裏腹に、笑いながら和やかに足を進めていった。
「次の10人、来い!」
いよいよ、俺たちの順番になった。
「そこの二人は通ってよし。他は帰れ」
ゴルドと俺以外に俺たちの組での合格者はいなかったようだが、城門をくぐった先にいた人数を見れば妥当なとこであった。
「思ったよりも少ないな……」
「ああ。恐らくB級冒険者に必要とされる程度の魔力量は、最低限求められているみてえだな」
それからしばらくして、第一審査は終わった。しかし、確実に千人――いや、それ以上いた参加者が30人ほどに減ったのは、かなり驚きだ。
「これにて第一審査は終了となる。審査を通過した32名には、このまま第二審査の説明を受けてもらう。」
通過した参加者はみな、顔を引き締め話の続きに集中した。
「第二審査は魔物との実践だ。これから闘技場にて魔物と戦ってもらう。……ん?そこの赤髪の男とローブの男、どうした?」
「質問があるのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、かまわん」
「では、先ほど魔物とおっしゃいましたが魔物の種類と数は教えてもらうことは可能でしょうか?それと合格条件についても」
「私も彼と同じです。少々、曖昧でしたので」
俺の質問に参加者の一人が相槌をうった。説明を聞いた瞬間に疑問に思ったことだったが、やはり俺以外にも疑問に思ったものはいたようだ。
「ああ、そのことか。別段隠そうとしたわけではないから安心しろ。聞かれれば答えるつもりであった。聞かれなければ言わずにいたがな」
兵士は悪びれた様子もなく、むしろ愉快そうであった。
「魔物はゴブリン10体だ。ちなみに、一度に10体だ」
「なるほど。ありがとうございました」
一度に10体か。一人で戦うのならば、簡単にいかない人もいるだろう。俺も少し不安ではある。
「ほかに何かあるか?ないならこのまま闘技場へと向かってもらう」
第二審査の説明も終わり、32人の参加者はそれぞれの思いを胸に闘技場へと足を進めた。
太陽は真上にあがり、俺たちを照らし続けている。
まだ今日は始まったばかりだ。
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ぐーの