第93話 フリルは戦術の長
「しょうがねえなあ、俺しかいなくなっちまったな」
ある意味ピンチだった。
これはただの戦力確認ではない。
簡単に言えば、「どちらが強いか?」を競う戦いだ。
誰と誰かと言えば、フリルとストライプであって、これで勝った陣営の方が場合によってはリーダ権を得かねない。
正直ストライプにリーダシップはないから、そのうちフリルに戻って来るとは思うが、それにしても、フリルの強権が揺らぎかねない。
そんな中、フリルが倒すべきは、天才魔導士のノーと、ケットシーハーフのストライプだ。
「後がつかえてるし、ちっと早めに倒しとくか。ワイン、開始の合図頼めるか?」
「分かったわ。では、二人、前へ!」
ノーが前に出ないので、フリルはその分前に出ようと思ったが、やめる。
離れていた方が、いいのだ。
「では、はじめっ!」
「……物理のたt……」
ノーが物理の盾を完成させる前に、フリルが走り、滑り込むように、ノーの足元を攻撃した。
ノーは全く防御もせずにそのまま倒れ込んで来る。
「うわっ!」
だから、フリルは抱きしめるしかなかった。
「熱烈なのは嫌いではない。だが、私は男性とセックスがしたいのだ」
「知らねえよ! 俺だって同じだよ!」
戦闘中にも関わらず、してもいない告白を断られたフリル。
を、嫉妬深く見つめるリボン。
お前、やっぱりそっちじゃねえか。
密着すれば、後はフリルは強い。
腕力のかけらもないノーでは、勝てるわけが──。
「雷撃」
「ぎゃっ!?」
この、至近距離から雷撃を放ってきたノー。
フリルはある程度魔法攻撃にも耐久力があるため、ぎりぎりで耐えた。
「やるじゃねえか……」
フリルは一旦立ち上がり、仕切り直そうとして。
「…………」
ノーが自分の雷撃で身動きが取れなくなっているのに気づいた。
駄目じゃん。
全然駄目じゃん。
「えーっと……」
フリルは攻撃するかどうか躊躇った。
何しろ、魔法がつかえないと、ノーはただの女の子、いや、それ以下だ。
「とてもいたい」
だろうな。
「ここで死ぬのか」
いや、自分の魔法で死ぬとか、恥ずかしくないか?
「死なねえよ。ただ、もう負けを認めろ?」
「うむ、それでいい」
ノーが敗北を認めた。
「勝者、フリル」
「ま、お前も強いが、戦い方を覚えよう、な?」
「だが、それよりも私はもっと多くの魔法をあーーーーーーーーーっ!」
「何を負けてるにゃ! お仕置きに五回連続にゃ!」
「あーーーーーーーーーっ!」
「あーーーーーーーーーっ!」
「あーーーーーーーーーっ!」
「あーーーーーーーーーっ!」
「あーーーーーーーーーっ!」
うるさい。




