第91話 ノーは伝説級の魔法使い
「あなたは強かったわ」
終わった後、ワインが手を差し伸べる。
ちなみにその時、ドットはストライプによってパンツを下ろされ四つん這いになっていたので、その手を取るよりも早くパンツを上げたかった。
けど、パンツより手を取った。
パンツが足首にあるままだけど、自分で上げられない屈辱が何だか気持ちいい。
ワインの方は、彼女が電撃持ちだと分かった上で、手を差し伸べた。
「戦いは終わった。貴女を信頼しているから、私は手を差し出すわ」と言わんばかりに。
「ごめんなさいね、私たちエルフは、個人よりも種族で好き嫌いを決めるところがあるから。別に貴女の事を嫌いだと思ったことはないけれど、どうしてもそう決めつけたところはあるわ」
「はい」
「でも、貴女は強い。それなら頼もしい味方になるわ。だから、改めてよろしくするわ」
「こ、こちらこそ!」
なんだか、いい感じに仲良くなった。
ドットちゃんのドットは、まだ足首にあるけど。
ストライプが、それを脱がせてノーに穿かせようかと企んでいるが、多分それは実現しない。
「さて、じゃ、そろそろ次、いいか?」
「いいわ」
「誰が出るにゃ?」
お前が決めろよ。
「えっと、ノーさんでいいのではないでしょうか」
「ノーかー、こいつ鈍いにゃ。ワインの足に付いていけないにゃ」
「それは私の真の素早さをしらないあーーーーーーーーーっ!」
最後までも言わせてもらえなかった。
「それでも大丈夫だと思います。これでも有名な魔導士ですし」
「こいつは戦いより研究がメインにゃ。戦いなんてしたことないにゃ!」
「戦った事ならある。三百年もの死霊使いになった触手にとどめを刺して倒した」
「え? ええっ!?」
三百年もの触手は魔力も増大で、常にマジックガードされていて切っても再生するという無敵であり、殺すことなど出来ない。
更に、死霊使いなら倒しようがない。
数年前、魔法学校の学生がそれを倒したのはあまりに有名である。
そして、その中にはノーやストライプがいたことも知っていた。
だが、これまでの言動から、ノーは倒したパーティーに「いただけ」だと思っていた。
今の話を聞く限り、少なくとも活躍していたのだという事だ。
となると、また、話が変わって来る。
ともかく、これまでノーが戦っているところを見たことがない。
「そうだったかにゃ? 覚えてないにゃ」
「私は憶えている」
それはそうだろう、自分の手柄を忘れる人は少ない。
「では、私が行ってくる」
「あ、はい、頑張ってください!」
パンが送り出した。




