第87話 パンの戦い
「しょうがねえなあ、だったらこっちはブラックだ」
「え? 私?」
「相手はパンだ。何とかなるだろ」
「そ、そうね。まだ子供だからね?」
その子供がこの中で一番賢いんだけどね。
「じゃ、二人前に立て?」
ブラックとパンが立つ。
ブラックは十五歳の女の子だが、その身体はもう完成された妖艶さがある。
それに引き換え、パンは四歳の年下で、身体は、まあ、裸になれば胸もちょっとあるし、くびれもないわけじゃないけれど、まあ、まだ男と変わらない程度の身体だ。
という、身体対決くらいしかしようのない、戦闘力を期待できない二人。
「はじめ!」
フリルの号令。
はじめ、と言われても二人ともどうすればいいか分からない。
「ブラックさん、戦いの舞ってありますか?」
「あるよ? 舞って欲しいかい?」
「お願いします」
パンが頼むとブラックは踊り始めた。
見た目も十五歳とは思えない妖艶さがある、褐色の肌。
銀髪の長髪が跳ね、舞い踊る様子は、「美しい」としか言えない。
その言葉があまりにも的中し過ぎていて、他の言葉が何だか違うように思えてしまうのだ。
ただ、踊りを見ているだけなのに、何故か心が鼓舞される。
どこからともなく、力がみなぎって来る。
今なら、普段出来ないことでも、出来そうな気がする!
子供であるパンは、誰よりも賢いが、それと同時に誰よりも純真である。
目の前の踊りの影響を、誰よりも受けていた。
出来る、今なら出来る!
やりたいとすら思っていなかった。
心でただ、想像していただけのあれを。
やるなら、今しかない!
「パンパーンチ!」
「ふぐっ!?」
パンは踊りに集中していたブラックの顎に、拳を当てた。
それは、弱いパンチだったが、油断していたブラックにクリティカルに炸裂し、ブラックは踊りのバランスを失い、倒れた。
まあ、顎は脳に来るから。
「いたたた……もういいわよ! 降参よ!」
「勝負あったな、パンの勝ち!」
パンは手を上げながら、これで叫ばなくても済む、とほっとしていた。
そして、参謀にも負けたブラックの最弱が確定してしまった。
もちろん物理的に殴り合えばブラックが勝つのだろうが、頭の出来が違い過ぎた。
「それじゃ、次は、んー、リボン、怪我させんなよ?」
「はいはい、じゃあ行くわね? 下手に抵抗しないで?」
「は、はい……」
ガチ勢が来て、というか、ほぼガチ勢しかいないが、パンは緊張する。
「よし、じゃあ、はじ──」
「降参して?」
号令の声が終わる間もなく、パンの目の前にいたリボンが消え、後ろから抱えられていた。
「ね? もういいでしょ?」
「あ……はい……」
全く気が付かなかった。
これが盗賊リボンの実力なのか。
気配の消滅と、音を立てない高速移動。
さすが、ストライプからも逃げられるだけはある。
「リボンの勝ち!」
パンは負けてしまった。
だが、それは当然のことで、一勝出来ただけでも凄いことだ。
これで後の戦いはじっくり見──。
「あーーーーーーーーーっ!」
「何を負けてるにゃ! お仕置きだにゃ!」
結局されてしまった。
久しぶりなので涙が出て来た。




