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第84話 嘘から出たマゾ

「ドットはマゾなんだよ!」

「うにゃ?」


 追い詰められたフリルは、とんでもないことを言い出した。

 

「だから、ケットシーハーフに指を尻穴に無理やり入れられるという屈辱的な事をされて惨めになる自分に興奮していたんだ!」

「ええっ!?」


 言ってしまった。

 もう後に引き返せない。

 恥をかかないようにするには強引に話を終わらせるしかない。


「まあ、これはもういいとして、話を進めるか」

「まだ途中にゃ」

「これ以上ドットに恥をかかせるな」


 こう言えば、もう話は続かないだろう。


「魔族の恥とかどうでもいいにゃ!」


 どうでもいい子がいた。


「その話は本当だにゃ?」

「もうやめろって。そのくらいでいいだろ?」


 続けられると、ドットが本当のことを言ってしまう。

 さっさと切り上げないと。


「話を戻すぞ? あいつに勝つために──」

「ドット! お前はマゾなのにゃ?」


 直接本人に聞くストライプ。

 まずい、そんな、はい、いいえの答えなら一瞬でばれてしまう。

 何を言えばいい?

 そうだ、可哀想だから聞くな、系の言葉でいいか!

 よし。


「そうですね、出来れば隠しておきたかったんですけど……」

「おい、それ以上聞くな、可哀そ……え?」


 ドットが照れくさそうにはにかむ。

 え? マジで?


「で、ですけど私は、嫌がっているのに強引にされて、惨めな気持ちで泣くのが好きなので……その……」

「どうでもいいにゃ! 望み通り、やってやるにゃ!」

「だから、私は望んでなーーーーーーーーーっ♪」


 声が、嬉しそうだった。


 フリルは、自分が人格者だとは思っていないし、他人の趣味なんてどうでもいいと思っているのだが。


 魔族がマゾってどういうことだよ、と心で突っ込んでした。


「それにしても、フリルさん凄いですね。それを言い当てるなんて!」


 レザーが、感動の目で言う。


「お、おう、まあな……」


 フリルとしては、完全な出まかせがたまたま正しかっただけなので、心苦しい。


「私としましても、言い当てられたのは自分のプライドが崩壊するのが分かってぞくぞくしました。私は下剋上マゾなので」


 下剋上マゾ、とは、自分が高い身分にいて偉そうにしているところを攻められて下の身分のように扱われて興奮するもので、まあ、ワカメに対する桜みたいな関係と思えばいい。


「ま、まあ、俺もそうだし、ここにいるみんなも、お前が魔族だろうがマゾ……あ……!」


 フリルは気づいてしまった。

 超、どうでもいいことに、気づいてしまった。


「お前、魔族だから、マゾなのか? マゾく?」

「違います」


 一言で否定された。


「魔族はどちらかというと男女ともサドが多いです、天国です」


 地獄だよ、名実ともに。

 おい、その先は地獄(りそう)だぞ?


「ま、まあ、とにかく、お前の趣味を否定しないし、お前の種族で差別するやつはいないからな?」

「分かりました、ありがとうございます。でも、時々は──」

「しねえから!」


 強めに拒否する、フリル。


「ま、その話は置いておこうか。まだ作戦を立てないとな」

「そうですね」


 何とか誤魔化せた。

 フリルはそう思っていたが、聡明なパンとワインは、出まかせがたまたま的中したことを、彼女の表情から分かっていた。


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