第81話 やっと戦術を考える。
「まあ、シルクさんが結婚相手を探している、というのも私たちの想像でしかないんですけどね」
「そうよね。いくら強いって言っても、人間なんて、全生物からすれば下等生物ですし、どこかにもっと強い人くらいいるわよ」
パンの言葉に、リボンが乗る。
「皆さん会ったことがないからそう言うんです。あれが魔王様を瞬殺したんですよ?」
まあ、リボンはともかく、みんな一応は会ったことがあった。
自分たちよりも遥かに強いという事は分かっていたが、確かに魔王を瞬殺するほどに強いと理解していたかと言われれば、さすがにそこまでとは思っていなかった。
「では、そろそろ、対決の方法を探っていきましょう」
パンが言うと、みんなが少し真面目になる。
ストライプですら大人しくなる。
「具体的な対策の前に、前提条件として、まず、誰も死なない、犠牲になることを考えないこと。それは私は当たり前だと思ってます」
それにはみんな無言で同意した。
「私たちには強い人と弱い人がいます。自分で身を守れる人とそうでない人。ですけど、シルクさんを前にすれば、皆さん等しく身を守れません。これも前提とします」
確かにそれは間違っていない。
この中では最強クラスにいる、フリルやワインですら、シルクには子供のように軽くあしらわれたのだ。
「という事は、防御に徹する防御組と、攻撃をする攻撃組に分かれて一丸となって戦うということね」
シルクさんマジラスボス。
「そうですね、ですけど、分け方としては前衛組と後衛組という感じですね。後衛は防御もそうですけど、前衛の人に能力を高めるようにしたり、シルクさんの能力を低下させることをしたりします」
「誰がどっちになるんだ?」
「それはこれから決めませんか? 私は戦いになれば役立たずなので、その場に行かなない選択肢も考えていますし」
「いや、役立たずでもねえし、パンがいなければ、全体をまとめる奴がいねえだろ。俺だって戦いが始まれば自分で手一杯になりかねえ」
チーム戦において重要なのは作戦であり、それは相手の出方によって柔軟に変化していく必要がある。
例えば軍は上官に絶対服従を求められるが、あれは全員が一つの作戦を実行するために一人一人がそれに疑問を持たず、実行することが必要だからだ。
そして、このメンバーは、その参謀役に最年少のパンを選んだのだ。
彼女が右に避けろと言ったら、みんな迷わず避ける。
「おそらく、ですけど、ノーさんリボンさん、後ブラックさんは後方ですね。ワインさんは、弓をメインにするなら後方ですけどどうでしょう?」
「でもそうすると、前衛が足りなくならないかしら?」
「そうですねえ、戦況によっては前衛後衛入れ替わってもらうのがいいんですけど」
戦況がどう変わるか分からない以上、フレキシブルに動ける人材が多い方がいい。
出来れば、即時に対応できて、戦況をある程度自分で判断できる方がいい。
そうなると、ワインは適材だ。
「ところで、ドットさんはどのような能力をお持ちなのですか?」
パンが何気なく聞くと、ドットが不敵に笑う。
「やっと聞いてくれましたね? いいでしょう、そこまで言うのなら見せてあげます。私の能力にひれ伏しなさぁーーーーーーーーーっ!」
余計な前振りのせいで叫ぶ羽目になってしまったドット。
こんな子の能力がすごいとかまずないなあ、とみんなが思った。




