第79話 シルクより強い存在
「あ、もしかして」
「どうした、パン」
「レザーさんの魅力を向上させるよう、神様の機械を改造したのって、シルクさんが見つけた相手に使うつもりなのでは、と思いまして」
「見つけた相手……」
つまり、シルクに勝てるような異形の者が現れたとして、それの魅力を高めて自分で好きになるようにする、ということ。
「でも、それって虚しくない? 結局のところ、魅力ってただ好かれるかどうかよね?」
なんか、リボンが言う。
そろそろ忘れそうなので、他の子も会話に参加させてみる。
「確かに、そうですねえ。私も沢山の異形の同族の人はいますけど、皆さん姿かたち以外で女の人に惚れられてますからねえ。もちろん姿かたちで惚れられている人もいますけど。マニアの人で」
ドットが同意する。
「分からないわけでもないわ。貴族王族というものは、結婚相手を選べない。だからせめてその相手は素敵な人であって欲しいと思うものよ。それが同族の、嫌悪しない程度なら我慢するでしょうけど」
相手が異種族で、しかも生理的に嫌悪するくらいおぞましい生き物なら。
シルクはその力をもってして、夫は選び放題ではあるが、掟からすると誰もいない。
だから、相手を選べないのだ。
自分より強く、自分と生殖可能な相手なら誰であろうと結婚するしかない。
だが、まだ見れる顔の者がいるはずの魔族で最も強い男に勝ってしまった。
となると、各妖精族もほぼ絶望的だろう。
魔族に勝てる可能性がある種族と言えば、神族、巨人族、竜族、あと、海を渡った向こうにいると言われている異星族。
異星族は異形中の異形であり、おぞましくも嫌悪する風体と言われている。
竜族も人型に化けることは出来るが、基本は爬虫類の身体だ。
巨人族は大きくて、生殖をすることは難しい。
神族はそもそも、生殖するのかどうか不明だ。
まあ、つまり、どんな相手であろうと、自分が好きになるために、魅力を高めてみる機械を独自で作るために、神の機械を改造して、後に奪うのではないだろうか、という仮定。
「うーん……あるかなあ?」
「分かりません、ですけど、可能性としてはあります」
確かに可能性としてはなくはない。
それは事実ではあるだろう。
だが、それ以前の話があった。
「それがどっちであったとしても、強さには関係ない。話をしても倒せないのではないか」
ノーの一言。
それは事実である。
事実なんだけどね?
あるじゃん、ほら、そういう事を言える立場の人とそうでない人ってのがさ。
簡単に言うと「おまいう」?
ね?
だから、仕方がないじゃん。
こうなるよね?
「あーーーーーーーーーっ!」




