第75話 敵の名前まで
「なんで……」
あまりの事にわなわなと震えるフリル。
「なんで、お前、お姉さまのこと名前で呼んでんだよ!?」
「え? そこ?」
え? そこ?
「で、でも、一応半日行動を共にしましたし、見知った人ですし……」
まあ、気持ちは分かる。
「見知った奴でもあいつは敵だ!」
「いえ、敵でもライサナさんはライサナさんですし」
「じゃ、じゃあ、あいつもパンツで呼べよ!」
「知りませんし、夜は全裸でしたし」
「じゃあ、ノー……はもういるし……って、てめえ、それ見てたのかよ!?」
「み、見てません!」
何故嘘を吐いた?
「ちなみにどんな裸だったんだ?」
「全然筋肉質じゃなく、柔らかそうで……あっ! 見てません!」
すぐばれたので説教された。
「あいつのパンツか……どうだったかな?」
メンバーの半分くらいがそんなんどうでもよくない? って思っていた。
そうでないメンバーのうち一人は、ぼーっとしてて聞いておらず、別の一人はそいつをより叫ばせるためのフィンガーテクニックを考えていた。
考えてるのは、フリルとレザーだけで、レザーはただの妄想なので、フリルだけが考えていた。
まあ、他の子は考えてもそもそも知らないんだけど。
フリルは孤独に考えていた。
幼い頃、というか、家出する前、もう思春期も迎えていた頃まで、姉に会う度に、たとえそれが公の場であろうと、パンツを確かめられ、フリルを穿いていたら、遠慮なく破壊された。
破られたというよりも粉々にされた。
部屋に帰ってくると、全てのパンツが粉々にされていたこともあった。
そこには優しさか、弱者への哀れみか、使い古しのパンツが入っていることもあった。
おそらく、いらなくなった自分のパンツを入れておいたのだろうが、そのときの素材は──。
「……シルク」
いきなり言い出したので、みんな少し驚いた。
「そうだ、シルクだ。奴はシルクだな?」
「そうですか」
パンが無表情に相づちを打つ。
尊敬するフリルさんに「どうでもいいよ」とは言えず。
「どうでもいい」
聞いていないと思っていた、怖いもの知らずというか、本当に怖いという感情を知らなそうなノーが言う。
この後何がどうなったか、言わなくても分かるよね?
まあ、一言で言うなら、色々あって最後にはこんなことになった。
「あーーーーーーーーーっ!」




