第74話 悪魔力の魔法
「それで、魔王様の破壊魔法を、まるで来るのが分かっているように避けたのです。魔王様の魔族では最も魔法が高速なのですけど……」
「破壊魔法ってのは何属性なんだ?」
「闇属性です……」
「闇属性……」
「基本的に魔族が魔力で構築した魔法形態は闇属性と呼ばれますね。この場合の魔力は魔法の力ではなく、悪魔の力ですけど」」
フリルが分からない、という顔をすると、パンが解説してくれる。
パンはいい辞書。
「んー、つまり、悪魔が持ってる固有の力を応用したものを魔力って呼んでるんだな?」
「そうでも、ないのです。例えば、自然の力を利用した魔法を四大属性魔法と呼んでますよね? それと同じように、悪魔は地獄の最底にある魔力によって生まれましたが、その力を利用出来るのは悪魔だけではないのです」
答えたのはドット。
パンちゃん解説者の役割努められなかったね?
「……その魔力は悪魔の魔力の事だよな?」
「では分かりやすいように悪魔の魔力を悪魔力と呼びましょう」
パンちゃんが形勢逆転を狙ってそんなことを提案した。
ちなみに本人は自分が解説とか辞書とか思ってないからね?
フィギュアの解説で、選手が飛んだ瞬間に「トリプルルッツ!」とか言う人も必要だし。
それと別に、詳しい解説できる専門家も必要だし。
「それで、その悪魔力ってのを使ったのが闇属性で、それは悪魔特有のものじゃねえってことだよな?」
「そうです。ただ、基本的に、悪魔を信奉している人の中で魔法の研究をしている人に限って使える物のはずなのですが……」
「どうした?」
「あの女は、悪魔信奉者ではないはずなのに、魔王様の魔法を一度見たら全て覚えたのです。そして、それを使えるようになっていたのです……!」
「え……!?」
魔王の魔法。
闇属性の、悪魔力を使った魔法を、一度見て覚えて使った。
それはさすがに、姉を化け物だと思っている妹でも信じられない事だった。
フリルは魔法を使えないが、魔法の構造自体は知識として知っている。
それと全く異なるであろうメカニズムを利用している闇属性の魔法を、見ただけで使えるようになった。
それは、本当の意味で、化け物ではないだろうか?
「あの……それと、ずっと気になってた事なんですけど」
「どうした、レザー?」
それまでずっと、こういう話し合いの場では、ストライプ並に聞いていなかったレザーが口を開いたので、一応はみんな大好きレザーくんなので聞いてあげる。
「俺の魅力上げたり、他の能力下げたりしてるのは神様の道具を魔王が改造してるんですよね?」
「知らんが、そうなのか?」
そういえば、そんな説明していない。
「女神様にそう聞いたんです。ということは……」
レザーはあまりに恐ろしいことを口にしようとしているため、一旦深呼吸する。
「ライサナさんって、神に干渉する力があるんじゃないかなって」
その言葉は、フリルやパンをもってしても、答えられなかった。




