第71話 ユアネームイズ”ドット”
「そう言うわけで、あの化け物を倒しに行こうと思う」
「化け物って、何の事?」
「俺のお姉さまだ」
「は?」
「俺のお姉さまだと言ったんだ」
リボンが変な顔をした。
いつも粗野な口調のフリルが、姉のことを「お姉さま」とか何言ってんの? って思った。
「あー……俺、第二王女だからよ。一応姉と呼べる奴はそう呼ぶんだよ」
「へー……へ!?」
何も知らなかったリボンが、フリルの言葉を疑い、周囲を見たがストライブと目が合ったので、慌ててそらせた。
ワインを見ると、静かに頷いたので、本当だと理解した。
エルフの貴族への謎の信頼感。
「ま、別にそういうのいいからよ……」
フリルは気まずそうに言う。
彼女は、自分が王女であるとか、そんなことはどうでもいいのだ。
目的があって、それに向かっている自分たちは等しいと思っている。
一人が下手に気を遣うとそれがみんなに移る……ことはさすがにこのメンバーではないと思うが、それでも一人でもそう言う態度をされるのは嫌なのだ。
「そっか……よかった」
リボンが胸を撫でおろす。
「本当のそっちの人かと思ったわ」
「そっちの……?」
リボンの言う意味を考え、思い当たった。
「ば、て、てめえっ! だから今朝のは違うって言ってるだろ!」
赤い顔でリボンに怒鳴るフリル。
そう、リボンは粗野なフリルが「お姉さま」と言ったので、血縁の意味の姉ではなく、もっとこう、百合百合しい「お姉さま」だと思ったのだ、朝可愛がられたし。
だが、フリルはレザーが好きで、レザーのレザーを毎日剥いてやってもいいと思っている。
剥いて何をするかは知らない。
そう言う気持ちがあるってだけで。
「とにかく! あの化け物を倒す! 嫌だと言う奴は抜けてもいい! 俺たちは来る者は拒まず、去る者は追わずだ!」
「私、ちょっと拒んだのに無理やり──」
「いや、抜けたければ抜けてもいいけどさ」
「今更いいわよ、倒すまでいるわよ。だけど、これだけは覚えておいて?」
「何をだよ?」
リボンがフリルに向けて宣言する。
「私、ノーマルだから。男の子が好きだから!」
「気が合うな! 俺もだ!」
ちょっとした睨み合いに発展して、ワインが呆れつつ、どう止めようか考えてて、ストライプがどう隙をついて襲いかかるかを考えていた。
「あ、あの……」
だが、割って入ったのは意外な人物だった。
「どうした? 魔族の女?」
「エルダルクです……その、来る者を拒まないというのは本当ですか……?」
「そうだな? 入りたいのか?」
「その……私も魔王様の仇が取りたくって、出来れば入れてもらえると──」
「歓迎の愛情表現にゃ!」
「あーーーーーーーーーっ!」
みんなが承認する前に、ストライプが歓迎してしまった。
「じゃあ、よろしくお願いします、えっと、水玉さん?」
レザーは見ていた。
「いや、あれはドットだろ」
「ドットね」
「ドットです」
見ていたので、みんなに先行して名づけをしてみたら、赤っ恥をかいたレザー。
その後、フリルに説教されたのは言うまでもない。




