第7話 ワイン・フリル・レザー
「それで、どこに行くつもりなのかしら?」
「とりあえず、東に魔王がいるらしいから東に行こうと思ってるけど」
曖昧だが、そもそも女神は東とすらもいっていなのだからしょうがない。
「この街道を東……学園都市アルメスかあ……」
エライザが思案気な表情。
「どうかしたんっすか?」
「この街道で強盗をしていたんだもの、彼女がお尋ね者になっている可能性もあると思っているのではないかしら?」
リークの疑問に答えたのは、フェケナの方だった。
「ま、そうだな。ワインの言ってること間違っちゃいねえ」
「ねえちょっと、ワインって誰のことかしら?」
「俺も、この辺りじゃ、ちっとは名が知れてるからな。あまり長い間滞在したくはねえな」
「ねえちょっと! 私はフェケナという名前があるのだけれど!」
「そうですか。でも、今の恰好なら誰がどう見ても強盗になんて見えないから、フード深く冠っていれば分かりませんよ。ワインさんもそう思いますよね?」
「…………そうね。今のあなたは強盗には見えないわ」
なんか、ワインさんが諦めた表情で答えた。
「ま、とにかく行ってみましょう、行ったら何となくの空気で分かりますよ」
「……そうだな」
エライザはフードを深く冠り直した。
学園都市アルメスは、リークの住んでいた村から一番近い都市だが、その規模はけた違いで、リークはその大きさにただ驚くしかなかった。
「……ったく、騒がしいのは苦手なんだよ……」
エライザがフードを深く冠りながらつぶやく。
「それは、同感ね。私もフリルと同じだわ。気が合うわね」
「てめ……くっ……!」
フードの中のエライザの頬が赤くなる。
うん、エライザのパンツはピンクのフリルだった。
それを指摘されて怒ろうと思ったがやり返されただけなので何も言えなかった。
エライザ、いやフリルさんが物凄く悔しそうな顔をしているが自業自得だ。
「うん、それいいね」
「……なんだよ?」
「『騎士殺しのエライザ』って名前は知れ渡ってるからみんな愛称で呼ぶってのもありなんじゃないかな?」
「……愛称? まあ、そりゃ、いいけどさ……もっとこう……恥ずかしくねえのがいいだろ?」
「今から考えている暇はないわ、フリル」
「てめえは元を想像しにくいからいいよな、ワインってよ! 俺のなんて一発で分かんだろ!」
「そうでもないわ。フリルが好きな可愛い女の子って思われるかもね」
「ま、時間もないし、もうそれで行こうよな?」
フリルが怒りと屈辱で半泣きの表情だ。
「分かった、そうしてやろう……皮」
「え? もしかして、レザーって、俺の事っすか?」
「ああ、いいだろ? てめえのことを言い表しているんだ。間違いねえよな?」
「勘弁してください! それだけは! もっとこう、チェックとかあるでしょ!」
「てめえのパンツの柄なんてどうでもいいんだよ。てめえはこれからレザーな?」
「いやぁぁぁぁぁぁっ!」
「ねえ、レザーってどういうことかしら?」
「ああ、こいつのな?」
「ちょ……ストップストップ! 分かりました! もうレザーでいいです!」
ワイン:パンツの色
フリル:パンツの装飾
レザー:ちんちんの装飾
これで三人とも、全員自分が認めたくはない愛称に決まった。