第60話 フリルとリボン
フリルの朝は、早い時も遅い時もある。
本来低血圧気味で寝起きは悪いのだが、これだけの人数がいると気配で起きることも多い。
そして、気配とかそんなレベルじゃないことで起きることの方がよほど多い。
「あーーーーーーーーーっ!」
ちなみに今日はこの声で起きた。
「……るせえなあ」
声の主がノーである事を確認して、寝返りを打つ。
フリルも最初は全員をストライプフィンガーから守りたいと思っていたけど、ノーはあまりにも無防備過ぎるし、リアクションも薄いので、守るのが面倒になっている。
フリルが守るのは自分、あと、トラウマを発症しかけたパンは絶対、あとブラックと、リボンの順か。
ワインは自分で何とかして欲しいと思っている。
それぞれを常に警戒することは不可能だし、そうなると、優先順位が出来るのも仕方がない。
まあ、一番楽なのは、ストライプを殺す事なのかもしれない。
が、フリルはストライプも仲間だと思っているし、彼女のバックにはエルフの女王もいるので、不可能だ。
「あーーーーーーーーーっ!」
今度はブラックの声。
そろそろ起きた方がいいかも知れない。
「やめなさいストライプ。いい加減に……ちょ……っ!」
途切れ途切れのワインの声。
抵抗出来ているのなら、心配はないだろう。
「起きるぞレザー」
いつものように、隣で寝ているレザーの頭を抱き寄せて起こしてやる。
ちょっと胸に抱いてやれば、恥ずかしくはあるが喜ぶので、誰も気が付かない間にいつもやっている。
「おらおら、起きろ~?」
胸に抱えてやると、ゆっくりと目を覚ますのが分かる。
フリルちゃんは、その時、なんか頭が小さいなあ、とは思っていた。
だけどそんなのは気のせいだと思い、抱えやすいのでいつもよりギュッと抱きしめてやった。
「ん……え? な、なに?」
胸の中からなんだか聞き覚えのない女の子の声が聞こえてきた。
「あ、あの……」
昨日仲間にしたばかりのリボンが、赤い顔をしてフリルを見上げていた。
「わ、悪い! 間違えた」
「私……そういう趣味はないけど……どうしてだろう、なんだか切ない気持ち……」
二重の意味で目覚めかけているリボンちゃん。
「いや、悪かったよ! 俺もねえよ! 間違えただけだから!」
「うん……分かった」
「分かってねえだろ! 離れろ!」
離れないリボンを引き離して、まだ寝ているレザーに同じことをして、仲を見せつけてやった。
完全に当たってて、完全にいい匂いと柔らかさに包まれたレザーは、とりあえずラッキーだった。




