第57話 その盗賊は大きなリボンのパンツだった
何とかしてこの女盗賊から逃げ出して、みんなが全裸で待つ風呂に行かなければ。
そして大義名分のもとにみんなの裸を見なければ、などと考えているレザーは、裸で寝ればいいよ。
「さ、大人しく来なさい? 絶対不自由させないわよ?」
「そ、それ、前にも言われました!」
じゃあお前今、何か不自由してるのかよ?
「早く行くわよ? さっさとここを出ないと──」
「帰りましたー」
「帰ったにゃ! ノーの服もあるにゃ!」
「返してほしい」
「ストライプ! さっさと服をノーに返せ! ノーも裸のままで歩くな!」
そんなことをしているうちに全員が帰って来た。
「何してるんだ、レザー?」
「あの、この人捕まえてください……!」
「? 誰をだ?」
怪訝な顔をするフリル。
レザーは今、確実に女の子の手を掴んでいるのだが。
確実に女の子のおっぱいが背中に当たっているのだが。
「こ、この人ですよ! この人……!」
レザーは抱きしめられている腕をつかんで引っ張った。
その隙に、手は離れる。
「あ……!」
振り返ると、誰もいない。
「どうしたんだよレザー?」
「なんだか、盗賊の人がいます! 気配を完全に消せる人です!」
「ドアを閉めてください!」
レザーの言っている意味を瞬時に理解したパンは、そう叫んだ。
が、今、一番ドアに近いのは動きの最も鈍いノーだった。
ちなみにまだ半裸だった。
そんな様子ではあの盗賊は一瞬にしてドアを抜けるだろう。
まずい、逃げられたか。
誰もがそう思った瞬間だった。
「ちょっと! どうしてあたしを置いていくんだいふぐゅ!」
後から入って来たブラックが、ドアで何かにぶつかった。
「こいつか!」
そこにフリルが飛びかかり、捕まえる。
「ちょっとやめて! 痛い! 痛いから!」
捕まえた女の子のオレンジのショートカットは、誰もが見えるようになった。
「お前は何者だ! 何しに来やがった!」
「私はただの盗賊よ……腕はいいから一人でやってるわ」
「何しにここに来た?」
「金目的に決まってるじゃない! でも……その子いいって思ったわ」
「そうか……てめえにはどんな能力があるんだ?」
「は? なんで言わなきゃならないのよ?」
「言わねえと、このまま保安兵に突き出すぜ? どうせここらのお尋ね者なんだろ?」
「……潜入と、潜伏と、鍵開け」
「へえ、そりゃすげえな」
「…………?」
フリルは素直に感心する。
「なあ、パン、どうする?」
「んー、いいんじゃないですか? フリルさんがいいなら」
「よし、おい、てめえは今日から俺らの仲間だ」
「は? なんでよ? 勝手に決めないでよ」
「てめえ、こいつに惚れたんだろ? だったら俺らと同じだ。一緒に魔王退治の旅しようぜ?」
「それは……でも……」
「仲間にならねえんなら、保安兵に引き渡すぜ?」
「……分かったわよ。仲間になるわ。私はシャラナ。だけど、この名前はこの辺では使えないわ」
「そんなんはいいんだよ。俺らも本名で呼び合ってねえからな……ワイン、レザーの目をふさげ」
「分かったわ」
レザーは後ろにいたワインに目を手でふさがれる。
「何なの……きゃぁっ!」
「んー……これは、リボン、だな?」
「リボンですね」
「でっかいリボンにゃー」
「何なのよ! 何のつもりよ!」
「てめえの名前はリボンだ! よろしくな、リボン」
「よろしくお願いします、リボン」
「リボン、よろしくニャー」
「何なのよ! 何してんよ! そんなニックネームの付け方、嫌がらせにしても悪質よ!」
この後やっぱりやめる、という彼女の説明するのに時間がかかった。




