第52話 敗走中の移動
「申し訳ないわ、フリル。あなたに信頼されていたって言うのに……」
シャツだけの、煽情的な格好のワインが項垂れる。
「いや、でもワインは凄かったよ! ケットシー三匹相手に勝ってたし! ただ、あいつの強さが人間並じゃなかったんだ!」
男性用のだぼだぼのズボンに生の胸を押さえただけの、更に煽情的なブラックがワインを庇う。
「そっか、ワインはケットシー三匹にも勝ってたのか……そりゃすげえな」
「あいつらは子供だったにゃ! だけど、三匹もいたらかなり手強いにゃ!」
「てめえは戦わなかったのか?」
「ワインが『私が話をするから、ストライプは黙っていなさい』って言ったから黙ってたにゃ! それに矢が多かったから流れ矢に当たりそうだったから何もしてなかったにゃ!」
まあ、一理なくもない。
となると、ブラックは後衛だろうし、ワインが一人でケットシー三匹とライサナを相手にしていたのだろう。
「……悪かったな、負けるって分かってるところに行かせてさ」
「それは……構わないわ。私はそれでも勝てると思っていたのだから」
「ところで寒いので服を買いに行くのはどうだろう?」
服をはぎ取られ、誰からも服を与えられてない、全裸のノーが言う。
その姿は、まさにノーだった。
ちなみにレザーは目隠しをして大人しく座らされている。
「そうだな……大き目の街も近いし、そこに行って服を買って今日はそこに泊まるか」
「肉にゃ! 肉の大盛りにゃ!」
ストライプは肉があれば味は結構どうでもいい。
そして、味にはこだわる派のワイン、肉は食べない派のブラックもいると、店を決めるのもとても大変なのだ。
だから、店を決めるリーダーはフリルに任せることになっている。
みんな問答無用でフリルの決めた店に行く。
文句は言うので、フリルはこれで大変なのだ。
何故フリルなのかと言うと、みんなが面倒なので、いつものまとめ役であるフリルが、王女だからという理由で押し付けられた。
そして、まとめ役の彼女はぶつぶつ言いながらも承諾したのだ。
フリルちゃんは責任感が強いから。
「とりあえず、街まで行くぜ? そこで服買うから、お前らは中に入ってろ。馬車も俺が運転するから、幌を下ろしとけ?」
先までワインが運転していたが、さすがに半裸で運転させるわけには行かないので、服を持っているメンバーで言うと、フリルしか運転出来ないのだ。
と言うかね、
ワイン:運転技術あり
フリル:運転技術はあるが最近は運転していない
ブラック:運転したことはある
くらいしかいないから。
後、役立たずと子供しかいないからな。
ところで、ノーって大魔法使いなのに、大した役に立ってないよね。
ただの叫び役でしかないよね。




