第47話 似てる姉妹でもなんかいた
「ここが私の住処ですわ」
レザーが連れて来られたのは、やっぱり小高い丘の山荘だった。
妹と似ていることをしてて、似たところに住んでいる辺り、本当に姉妹の血が流れているのは分かる。
「あなたは本当に魅力的だわ。あの子が鍛えて強くして結婚したいと思うのも分からくはないくらい」
顔の目の前で、美人のお姉さんにそう言われて何かを答えられるほど、レザーは出来た人間ではない。
「だから、あの子たちのいい餌になると思うわ」
そう言って、頬を寄せるライサナ。
ここにきて、初めて背筋がぞっとするレザー。
餌にされるということはつまり、そういうことだ。
ライサナはおそらく野獣のようなものをペットにしているのだろう。
その餌として、レザーを食わせる、ということだ。
「注意しなさいよ、あの子たちは私でも手が付けられないくらい獰猛な子だから」
震えが止まらない。
汗がどんどん出てくる。
初めて、死を身近に感じた。
逃げることを考えなければならない。
だが、力もなく、頭も悪い自分がどうすればこいつから逃げられるだろうか?
そんなことは不可能だ。
少なくとも、すぐには思いつかない。
だから、待つしかない。
彼女たちが助けに来てくれるのを待つしかない。
ただ、来てくれるだろうか?
彼女たちは自分を魅力的な人間だと思っているから、ついて来てくれるのだ。
それは女神が言った通り、自分の魅力が高いからであって、本当の自分の魅力は高くすらない。
一旦離れたことで、それでも来てくれるだけの価値が、自分にあるのだろうか?
そんなことがどうしてもう不安になる。
「さあ、入ってくださいまし。あの子たちも待っているわ」
「あ、はい……」
ライサナに続き、レザーは家の中に入る。
「お帰りだにゃー!」
「なんだこいつにゃ?」
「可愛いにゃー。性交ってもいいのかにゃ?」
彼らを迎えたのは、猫耳に猫尻尾の小柄な女の子三人。
そう、彼女たちは純血のケットシー三匹だった。
「今はまだ駄目だわ。明日の朝なら食べてもいいわ」
「今すぐ食べたいにゃ!」
「いただきまーすにゃ!」
「待てと言っているわ!」
びくん、と三匹のケットシーの動きが止まる。
「明日になったら、好きにしていいから、今日は我慢しなさい」
「分かったにゃー」
「明日が楽しみだにゃー」
そう言ってぞろぞろと奥へと帰って行く。
レザーは馬鹿なので、ほっとしただけだが、これは実際は考えられないことだ。
ケットシーという種族は、人間やエルフよりも強く、だが、自由奔放で絶対に人に飼いならせないはずだ。
まあ、簡単に言うと、ケットシーハーフであるストライプよりも強く、自由奔放なのだ。
そのケットシーが三匹もいて言うことを聞かせるということは、普通のことではない。
それを従わせている、というライサナという女の実力の程は並大抵ではないということだ。
「入りなさい? あなたはずっと私と共にいればいいわ。私から離れるとあの子たちに襲われるかもしれないわ。あの子たちは、人間の男の子が大好物だから」
「は、はい……」
レザーは、ライサナと一緒に明日まで過ごすことになった。




