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第45話 ヒロインはさらわれない

この話には残酷っぽい表現がありますが、ここまで読まれてきた方はそんなのじゃないと分かってくれてると思います。

彼女たちは特殊な訓練を受けています。

「さあ、久しぶりに戦いましょうか? どれだけ強くなったのか確かめてあげる」


 一歩、一歩と近づいてくるライサナ。

 ぞっとするほど美しい、獣。


「ひ、ひぃっ!」


 慌てたフリルは、そのまま馬車を、誰も乗っていないままで走って逃げようとする。


 だが、馬車の操作はそう簡単ではなく、しかも慌てているフリルにUターンなどというテクニックは使えない。


「逃がさないわ」


 一瞬で馬車に飛び乗るライサナ。


「肉付きもまだまだね。筋肉が全然ないわ」


 フリルに後ろから抱き着き、身体をつまむ。


「や、め……ろ……」


 フリルは恐怖にもう、声すら出なくなっていた。


「実の姉に何ってことを言うのかしら、この子は? まずはおしおきにしましょうか?」


「あーーーーーーーーーっ!」


「せっかくだしここから鍛えてあげるわ。耐えなさい?」


「あっ! あーーっ! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 ライサナは、貫いた指をぐるぐると回し始める。


 ただ、絶叫するだけのフリル。

 それを何も出来ず見守ることしか出来ない仲間たち。


 自分たちでは絶対に敵わない。

 だから、動いても仕方がない。


 負ければ蹂躙され、全てを奪われる、そんな弱肉強食の世界であることは誰もが知っているのだ。


 ただ、一人の馬鹿を除いて。


「待ってください!」


 レザーが叫ぶ。

 いつの間にか馬車に乗っていたレザーは少し離れたところから叫んでは見たが、怖くて近づけなかった。

 振り返るライサナに震え上がるレザー。


「フ、フリルさんを離してください!」


「フリル? ああ、この子のニックネームなのね? そういえば昔からフリルのパンツが大好きだったわね。まあ──」


 ビリィッ!


 ライサナはフリルの履いていたパンツを引きちぎる。


「私が全て破ったわね? だって私、フリルの下着は大嫌いだから」


「や、やめてください! フリルさんをこれ以上いじめないでください!」


 レザーは馬鹿だしこれまで保護されてきたから、恐怖に疎いのかも知れない。


 あと、美人のお姉さんに尻穴に指つっこまれてぐりぐりされたいという青少年特有の性的興味もあるのかも知れない。

 美人美少女の前に立ち、尻穴ぐりぐりを拒否できる者だけが、彼を変態呼ばわりし続けなさい。



「ふうん、この子があんたが惚れた子ですの? 肉付きも反射神経もほとんどなさそうに見えますわね」


 ライサナに顎くいされ、これから色々なものを奪われる覚悟を決めるレザー、このくそ変態野郎が!


「ほっといてくれよ! 俺はそいつが好きなんだよ! そいつのためなら……そ、そいつのためなら……」


 フリルが言い淀む。

 その表情は恐怖に満ちていた。


「この子のためなら、何ですの?」


「そいつのためなら、両親にだって逆らってやる……!」


 フリルの両親。

 この国の王と王妃に昨日いいようにやられて、叫ばされた。

 フリルにとっては絶対的な恐怖の対象だ。

 だが、その意志に逆らって今、ここにいる。

 旅を続けている。


 レザーといるためなら、彼らに喧嘩を売ることも厭わない、そんな気持ちでいる。


「ふうん……でも、分かっているのでしょう? 私たちが生きている意味を?」


 この国の王家は、王族自体が強靭であることが求められる。

 王族の結婚相手は、自分より強い異性。

 それ以外の婚姻は元より子を成すような関係は認められていない。


「だから、俺はこいつと一緒に魔王を倒しに行く! 魔王を倒すような奴は、当然人類最強だ。だから──」

「そんな戯言、私は認めませんわね」


「あ……っ!」


 ライサナはレザーを抱え、ひょい、と馬車から出る。


「エリーズ、この子が本当に欲しければ、取返しに来なさい。お友達と何人で来ても構わないわ。そうね、明日の朝までは待ってあげるわ。そうでなければ、この子はうちの子たちのエサになるわ」


 そう言って、ライサナはレザーを抱えたまま、山に消えて行った。

 完全敗北した少女たちを残して。


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