第4話 戦闘描写超面倒い
「待ちな!」
ダッシュで降りて行ったエライザは、リークが降りていくよりも遥かに速く街道にたどり着いた。
「よお、てめえ、ここを通るってことがどういうことか分かってんだろうな?」
エライザはリークに言った言葉と一字一句変わらずに、そのエルフのお嬢さんに言った。
これ、どうも定型文のようだ。
その辺突っ込んだら怒られるしどうせ同じ奴が二度通ることはないから問題はないだろう。
それがもしばれても怖いから誰も突っ込めないし、もしくは可愛いから突っ込めない。
エライザは見た目だけならかなり可愛い。
「何? 私は急いでいるのだけれど」
面倒そうに答えたエルフの方も、見た目は可愛い。
金の髪に、緑を基調としたマント。
その下はワンピースのような白いミニと、濃い赤の胸当てがちらりと見える。
すらりと長身のエライザとは違い、小柄だが、子供体形というわけじゃない。
全体的に縮尺が縮んだだけの大人に見える。
ロリはそのうち出してやるから、ちょっと待ってて?
「は、エルフが俺の事知ってるわけねえか。まあいい、金目のものはおいていけ、服もマントもだ」
「嫌よ」
「だろうなあ! だったら──対けっ……! てめえっ!」
エライザが言い終わるのを待たずに、エルフは弓を射かけた。
「あら、よく避けたわね」
「このくらい当然だ!」
言いながら、エライザはエルフのもとに走る。
その速度は、森を高速で走ると言われるエルフですら──。
「……くっ!」
射かけられた矢を、エライザはナイフで叩き落す。
多少、集中と速度を落とされたが、そのまま突き進み──。
「く……っ、そ……っ!」
矢は次々と射かけられる。
ついにエライザの前進は止まる。
何しろ隙がない。
常に手に二本以上矢を持っていて、いつでも連射が出来るようにしている。
このとき、やっとリークが追い付いてきた。
今までかかってたのかよ、と思うなかれ、彼は素早さも失っていたのだ。
彼が目にしたのは、何とかしてエルフのもとに到達して攻撃をしようとしているエライザと、それを弓連射で食い止めているエルフの攻防だった。
というか、動体視力も失った彼には、ただ二人が少し離れてゆらゆら動いているだけにしか見えなかった。
だが、彼の登場が勝敗に大きく影響する。
エルフが彼に目を取られたのだ。
それはほんの一瞬のことだ。
だが、この二人の対決には、その一瞬は命取りだった。
「ぐっ……!」
その一瞬で追い付いたエライザは瞬時の判断でナイフを使わず、素手でエルフの顔を殴る。
エルフは吹き飛んだが、その大半は自分から飛んだものだ、ダメージもほぼないだろう。
その着地を狙ったエライザ。
「ぐぅ……っ!」
だが、エルフは、エライザが予測もしていなかった行動を取った。
頭から、エライザの顔面に突っ込んできたのだ。
「二人ともーーーーーー!」
リークの声は戦いに集中している二人には反応を返す余裕はなかった。
頭突き攻撃はほぼ初めて二人の間にダメージを生じさせた。
だが、この頭突きはエルフにとってはかなり思い切った技だ。
何しろエライザは長身であり、そのリーチに捕まってしまえば、力で勝てないエルフに勝ち目はなくなる。
「さっきからずっとーーーーー!」
だから彼女は、エライザの顎を狙った。
顎に当たりさえすれば脳天を揺らすことが出来、離れる程度の隙は作れる。
エライザはダメージこそ受けたが、顎は外している、このチャンスにエライザは──。
「パンツ見えてるんだけどーーーーーー!」
「!」
「?」
この瞬間、二人には、思いっきり隙が出来た。
どちらか一方が集中力を保ったままなら、確実に相手を仕留められたことだろう。
それよりも二人は自分の足元を見る。
長い戦闘でスカートがまくれ上がっており、確かにリークの言う通り、パンツが見えている。
特に吹き飛んで一回転したまま頭突きをしたエルフは、若干パンツもずり落ちている。
「…………っ!」
「…………っ!」
二人は慌てて身なりを整えてる。
そして、相手に戦意がないことをお互いに確認してから、緊張が解けたのか、その場に座り込んだ。