第38話 王宮の惨劇
「ふう……うわっ!?」
ベッドに座り込んだら思った以上に沈んでバランスを崩すレザー。
彼は今、王女の客人として、王宮の迎賓の間の寝室に連れて来られた。
あの後フリルが戻ってきて、ライゼル伯爵を介して王宮に向かうことになったが、夜が遅かったため、明日の謁見となった。
だから、とりあえず彼らも寝室を与えられて寝て待つことになったわけだが。
なんかこうしてレザー一人の部屋にフォーカスを当てると、こいつが主人公みたいだね。
ちなみに他の子たちも一人一部屋割り当てられたけど、ストライプがどうしても親友と一緒がいいと言いだして同じ部屋になった。
ちなみにそれは隣で、さっきからもう三回くらい「あーーーーーーーーーっ!」と聞こえてくるハイペースだった。
とりあえず、こんな豪華な場所で眠ることが出来るようになった原因でもあるフリルは、この後どうなるんだろうか?
一国の王女が、見つかった以上、これ以上一緒に旅は出来ないのだろうか?
普通に考えて、無理だ。
だけど、フリルがいなくなったらどうなってしまうんだろうか?
1.「仲間から」レザーを守ってくれる人がいなくなり、レザーの童貞がピンチ
2.率いていくリーダーがいなくなるため、レザーが率いていくしかなくなる
3.パンをストライプから守るため、そばで寝かせなければならない
4.そもそも、この名前で呼ぶのをやめてもよくなる
あれ? 特に問題ないどころかこっちの方がいいね? とか考えてるレザーは一度ひどい目に遭えばいいと思う。
「失礼するわ」
そんな彼を訪ねて来たのは、フリルの次に仲間になったワインだった。
格好は風呂上りなのか、まだ髪も乾ききっておらず、服もめっちゃ薄着だった。
「どうかしましたか?」
小柄なくせにフェロモン出してきたワインに戸惑うレザー。
「あなたの事だから、どうせフリルの今後を考えて悩んでいるかと思ったのだけれど、間違っていないようね」
「あ、はい。これからどうなるのかなって……」
レザーは心配していたことを指摘され、素直にそれを認めた。
一国の王女が、これまで自由であったことの方がおかしいのだ。
見つけられた以上、これからは保護され、自分たちのような庶民からも隔絶され、華やかな世界で生きていくことだろう。
それが正しい道なのだ。
「大丈夫よ。あの子は、そんな子じゃないわ。きっと、これからも私たちと旅をするわ」
「でも、本人がそう思ってても、しょうがないですよね。周りが許さないと」
「その周りに許してもらうくらい、あの子はやってのける子よ?」
はっきりとした口調で自分の認めるフリルを全面的に信頼するワイン。
「…………」
だけど、レザーにはそれは無理だと思っている。
これでもう二度と会えないくらい離れてしまうと考えている。
「しょうがないわね」
ワインは優しく微笑んでレザーの腕を取る。
「あなたに寂しい思いをさせられないわ。今日は私が一緒に寝てあげる」
「え……?」
「何を戸惑っているの? 昨日までと同じだわ」
「あ、そう、ですね……」
昨日まではみんなで狭いテントで雑魚寝だった。
その中にはもちろん、ワインもいた。
だから、何も変わらない、はずだ。
「じゃ、そろそろ寝ましょうか。私も眠くなってきたわ」
「あ、はい……」
ワインに促され、ベッドへ──。
「来たにゃ! む、ワインが抜け駆けしてるにゃ!」
いきなり開け放たれたドアからそんな声が聞こえる。
「私はもう寝たい」
「だからここに寝に来たんだにゃあ!」
「あーーーーーーーーーっ!」
目の前で繰り広げられる惨劇。
何事かと集まってきたメイドたちに──。
「あーーーーーーーーーっ!」
「あーーーーーーーーーっ!」
「あーーーーーーーーーっ!」
大惨事になった。
「眠れません……レザーさん一緒に寝てください」
「パンもか!」
「あーーーーーーーーーっ!」
「なんだよ? あたし、もう寝たいからあんまり騒がないで欲しいんだけど」
「ブラックもか!」
「あーーーーーーーーーっ!」
なんか、静やかに終わりそうだったけど、やっかいさんの登場で一気に惨劇と化した、ここは王宮、そして彼女たちは、王女の友人枠。
※彼女たちは全員特殊な訓練を受けております。
一般の方は決して真似をしないようにお願いします。




