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第35話 この中に、王女様がおる。お前やろ! 「違いますわ」「お前や!」

「!?」


 メンバーで道を歩いていたら、前を歩いてきた男性がこの集団を見て驚いた表情をする。

 まあ、無理もない、エルフもケットシーハーフもいれば、銀髪褐色肌の踊り子までいる。

 一人を除いてほぼ美少女で構成されたメンバーだからだ。


 さっきからそういう視線や態度は山ほどあったので、特に誰も気にしなかった。


「あの、大変失礼ですが……」


 だが、その男の人は話しかけて来た。

 女の子だけならナンパ目的で話しかけられそうだが、レザーがいるからどこかのお坊ちゃんのハーレムにも見えて、そういうのは寄ってこない、死ねよレザー。


「はい、何でしょうか?」


 この中で一番一般的なコミュ力のあるパンが応じる。

 十一歳が一番コミュ力あるとか、どうかと思う。


「違っておりましたら大変申し訳ありませんが……」


 何度も確認しつつ、男性が見ているのは、フリルだった。


「もしかすると……エリーズさま、ですか……?」


「? いえ、エリーズ、という名前の人はここにいませんけど……あれ?」


 天才パンですら忘れたのでもう一度本名を思い出そうとする。


 パンはララルク、ノーはマリュン、ストライプはヴェナ、ブラックはアヴェシーナ。

 それは知っている。

 だが、彼女が入った時に既にいた、フリル、レザー、ワインだけは本名を知らなかった。


 レザーはともかくとして、フリルかワインのどちらかがエリーズという可能性はある。


 だから、断言をすることは出来なかった。

 それを見て取ったレザーは、珍しくその心中を察することができた。

 だから、彼は彼女の言葉に補足してやった。


「この人はフェケナ・ワインレッドさん、こちらはエライザさんなので、違いますよ?」

「馬鹿っ!」


 フリルが軽く頭を抱える。

 ワインはその理由を理解出来たが、それよりも自分の姓がワインレッドと思われていることの方に気が行ってしまい、フリルの方はどうでも良くなった。


「エライザ? やっぱりエリーズさまでしたか!」


 あっちゃー、ばれたか、という態度のフリル。

 レザーは馬鹿だから知らないけど、エライザとエリーズは同じ名前の発音が違うだけなのだ。

 ぶっちゃけて言うと、王族のお姫様ならエリーズと呼び、町娘ならエライザと呼ぶのだ。

 五十年くらい前の国王の第一王女がエリーズ姫で、彼女と同じ名前の庶民がいると知った国王が全国のエリーズという名前の女の子を、全員エライザと呼び方を変えるように命じたらしい。


「兵が総出で探しておりました! ご無事でしたか!?」


 つまり、エリーズと名乗れる女の子は、直系の王族のみだということだ。


「え、ええ……申し訳ないと思っていてよ」

「!?」


 フリルの口から、考えられないような言葉が漏れて来た。

 まるで、ワインがフリルに乗り移ったようだ、とみんなが思った。

 ワイン自身は、いまだに自分の姓が勝手に変えられたことにご立腹だ。


「けれども、わたくしのことはもう忘れてもらって結構よ。どうせお母さまには、わたくしのことなど理解していただけないのは分かっておりますし」

「そのような悲しいことを、おっしゃらないでください……国民はみんな、殿下のことをお慕いしているのです……」


 その男性が泣きそうな声で言う。

 もともと困ってる人や悲しい人がいると助けてしまういい子のフリルにとっては卑怯な武器を突き付けられたようなものだ。


「いえ、その……皆さんのご厚意はとても有り難いですわ。ですが、わたくしは皆さんの思うような者ではありませんの」


 ていうかさ、さっきからお前誰だよ。

 似合ってるんだけどさ、もともと見た目がお嬢さま風だから。


「と、とにかくっ! わたくしのことは放っておいてくださいましっ!」


 まし? 汚い言葉がまた可愛かったフリルちゃんが、語尾に「まし」?

 どうするでまし、このままじゃ属性が変わるでまし。


「あっ、エリーズさまっ!」


 走っていったエライザはめっちゃ速いのでその男の人も追いつけず、そして残されたレザーたちは後を追おうとして、なんとなくそそくさとその場を離れた。


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