第33話 仲間が増える
「素敵な踊りだわ。うちの専属踊り子に抱えたいくらいだわ」
高貴な子が高貴ぶってる。
「今度は一緒に踊るにゃ?」
「いやだわ! あんたとだけは絶対踊らないよ!」
一緒に踊ったらほぼ確実にストライプフィンガーが尻穴を貫く。
なんかちょっと格好いい。
「この子、生活に困っているなら、連れて行ったらどうかしら?」
「でもよ、こんなの役に立つか?」
役に立たないのはいくらでもいると思うが、特にレザーとか。
「この子は直接的な戦闘人は参加出来ないかもしれないわ、でも、自分でよけることが出来るから守らなくてもいいし、この子は魔法を使った踊りを踊るから、さっきみたいな気分の高揚や他の技も使えるかもしれないし、それにあの踊りを見たら心が荒んでいる時に潤うかもしれない」
「本人の心が荒んでるけどな」
「なんだよ!? 勝手に話を進めないでよ!」
フリルもまあ、同じことは思わなくもない。
フリル自身は精神も強いつもりだし、大抵のことで心が壊れることもないが、少し前に実際に壊れかけたパンもいるし、レザーだって強そうには見えない。
だから、こういう心を安らかにさせる者がついてきてもいいとは思う。
慰安嬢とか言ったら問題になるんだろうか?
とりあえずぶっこんでみた冒険野郎。
だけどね? フリルちゃんも女の子だから。
顔はまあ、好みの問題もあるけど、褐色に銀髪なんて珍しい上に、まだあどけなさを多分に残す顔は悔しいけど可愛い。
スタイルも人それぞれだけど、磨き上げている彼女にはどうしても負ける。
女として見てどちらが魅力的か、と考えたら、どうしても怖くなってしまう。
「フリル、あなたとレザーの仲は、そんなに脆いものかしら?」
その心中を察したワインが言う。
「どんな魅力的な子が来ても変わらないのではないかしら? もしあなたがそう思っていないのだったら──」
大抵はいつも悠然とした穏やかな態度、ストライプに尻穴を狙われた時だけ超必死なワインがにやり、と戦闘を挑むような眼をする。
「私が、かっさらってしまおうかしら?」
「ちょ……っ!」
ワインもこれまで何ともないふりをしてきたが、レザーのことを嫌いじゃない。
いや、それどころか彼にならエルフと人間の種族間のタブーを超えてもいいと思っている。
それは最初から分かっていたことだ。
分かっていたことだけど、目の前で知らされると、焦る。
だけど、彼女はそれでもこの踊り子を仲間にしようとした。
ワインは言っているのだ「私にはその度量がある。あなたにはあるのかしら?」と。
「……分かった。ついてくりゃいいさ、えーっと、ブラック」
「だそうよ、ブラック?」
「……何だよ、ブラックって?」
「ニックネームよ。あなたは今日からブラック」
つまり、ブラックだったのね。
「……なんだよ、あんたらも仲間とか言って、あたしの肌の色馬鹿にしてんのか?」
なんだか、変な誤解してるブラックちゃん。
「違えよ、お前の肌じゃなくって、お前の──」
「騙されると思ってんの? あたしはこの街でどれだけ馬鹿にされてきたと思ってんのよ?」
誤解は拗らせるとろくな事がない。
「そもそも、何であたしがあんたらと一緒に行くって勝手に決めてんだ! あたしは行きたいなんて一言も言ってないよ! だいたい、あんたらのことはさっきから気にくわないと思ってたんだ!」
「ブラックはパンツの色だにゃー」
「……え?」
「私がストライプ、こいつがワイン、これがノー」
「ちょ……勝手にめくらないで頂戴」
何の前触れもなくスカートをめくられてあわてるワインは確かにワインだった。
そして、めくられても無反応なノーはノーだった。
「いいわけをさせて欲しい」
「させないにゃ!」
「あーーーーーーーーーっ!」
問答無用のやり取りに、ただ唖然とするブラックちゃん。
「というわけで安心するにゃ!」
「安心出来る要素はなかったけど……そうか、あたしのパンツは黒だからな?」
「それに私はエルフよ? 人種がどうこうの前に種族が違うわ? そんなみんなが今更人種なんて気にすると思うかしら?」
「あー……そうだね?」
ブラックはどちらかというと、ストライプの方を見てうなづいた。
おそらくケットシーが、おそらくメンバーに大迷惑かけていそうなのにここにいる、ということは、本当に人種で人を見ることはないんだろう。
ここでなら自分は、みんなと仲良くやって──。
「いやいやいや! 別にあたし、旅に出るつもりないから!」
ほぼ決定事項になっていたけど、よく考えたらブラックちゃんはこの街一番の人気踊り子だから、ここにいる限り、生活は出来るし、旅に出るメリットも全くないのだ。
「行きましょうよ! ここにいるよりも楽しいこともきっとありますって!」
「そうは思わないわ」
ブラックはストライプを見て言う。
確かにあれをされつづけるとどうなるか分からない。
どうにかなってるはずのノーが何も言わないし。
実際の話、尻穴は結構リスクも多く、きちんと正確な知識で行わなければ死に至ったり、一生ものの大怪我になりかねない。
そのリスクを負った上で旅につきあうメリットが全く──。
「俺からもお願いします。一緒に旅をしましょう」
「行くわ」
ブラックが仲間になった。




