第30話 ミュージックスタート!
首都というものが他の都市と何が違うのかと言えば、王族が在住している都市、ということだ。
他の都市はその他の貴族たちが居住している。
それは同時に、この国の政治がここに集結しており、また、外交の中心でもあり、あらゆるものが地方から首都に流通されてくる。
それは物だけでなく、情報や人などもそうだ。
中心部の裏手にある、あまり裕福な者たちが住んでいるとは思えない、狭い家屋が密集した地域がある。
こんなところでも治安がそれほど悪くないのは、首都としての誇りだろうか。
そして、表通りには比較的裕福な人たちが住む地域があり、更に王城のそばには、貴族達の別邸が数多く立ち並ぶ。
その、中間くらいのところに、その大きな広場はあった。
そこには、多くの芸人がおり、道行く人に芸を見せて金を稼いでいるのだ
それを目当てにこの公園に来る裕福な客も数多くいる。
そこに現れたのは、五人の美少女を従えた、一人の男。
見た目は普通の少年に見える、だが、どうにも目が離せない魅力があった。
その男は、公園の中心、人が一番多くいる地域に来ると、そこに立ち、少女たちはその周りに並んだ。
「みんなー!」
いきなり叫ぶ。
なんかの芸だろうか?
元々目立っていた彼に、周囲の視線が集中する。
「今日は俺たちのために集まってくれてありがとう!」
知らんがな。
周囲の声は大体そんな感じだった。
「今日は俺たち、新曲を引っ提げてきてるんで、聞いてください 『キミの尻穴を、守りたい』」
なんだこいつら。
なんだこのタイトル。
そんな観客をそっちのけにして、歌が始まった。
「きーみーの、あーなーをー!」
全く美声でもない、どちらかというと下手くそな歌声。
それに合わせて、少女たちがばらばらと各自統一感のないダンスを踊る。
まともに踊ろうとして、みんなの視線に気づいて真っ赤になる者もいれば、どうしていいか分からず、とりあえず揺れている者もいる。
一生懸命踊る小さい子もいるし、身動き一つしない者もいる。
もう、何が何だか分からない。
打ち合わせくらいしとけよ。
そして、自由奔放に駆け回り猫耳尻尾の少女。
彼女が、いきなり不動の少女に襲いかかり、その尻穴に──。
「あーーーーーーーーーっ!」
「絶対守ると、誓うよーーー」
サビを歌い切る男の後ろでその痴態は繰り広げられた。
守れてないやん。
その、アバンギャルドでアグレッシブな芸風はツッコミどころ満載だが、目が離せない。
特に後半不動の少女が叫ぶところ、エロ目的やん。
気が付くと広場全体の人が取り囲んでいる。
「ありがとー! 最高だよ! 次もゴキゲンなナンバーを行くぜー!」
なんか、どこか違う世界の古いMCみたいな口調で曲紹介をする男。
その歌もさっきと同じく、歌は下手くそ、それぞれはバラバラ。
唯一違うのは、尻穴狙いの猫耳少女と、揺れていた少女が軽く格闘を始めたことくらいか。
さすがに、この数の観客の前で尻穴を晒すのは絶対に嫌だと思った揺れ女の意思が勝った。
曲の最後には不動女がまた叫んだ。
三曲目に入るころには、そこら中から歓声が上がり、金が飛んできた。
猫耳少女がそれを拾い集め、そして、最後には不動女のもとに行った。
「あーーーーーーーーーっ!」
それくらいが、男の体力と、不動女の尻穴が限界になったので、終わりとなった。
「みんな、ありがとう……ぜえ……ぜえ……」
息が切れた男がそう言って、ふらふらと歩いていくのを、顔の真っ赤な少女が肩を貸して去っていく。
嵐のように現れた六人は、スポーツと音楽を融合した人々のように、広場を湧かせ、去っていった。
ちなみに飛んだ金はすべて猫耳女が回収した。




