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第29話 パンちゃんは稼ぎたい

「さっさと行くか。で、首都(エラニューゼ)はさっさと通りすぎちまうか」


 首都に行くことを渋ったフリルちゃんは、今度もまた、首都にあまり滞在したくはないようだ。


「うーん、でも首都は一日以上は滞在しますですよ?」

「何でだよ?」


 幼女につめ寄る騎士殺し。


「情報収集もしなきゃいけませんですし、他にもやるべきことがあるんです」


 一晩優しく抱いて寝てくれたフリルがどれだけ凄んでももう怖くもないパン。


「……何だよ?」

「旅費を稼がなければなりません」


「必要ねえだろ、徒歩で行くんだし、食費はかからねえし、足りねえなら少しは出すぜ?」


 狩りの名手が二人もいる以上、狩りをしていれば食べるに困らない。

 それに、それ以外に経費が必要だったとして、フリルはそれなりに裕福に暮らせる程度の金を持っていて、その多くを手持ちしている。


 それに金が足りないなら、エルフの貴族であるワインは旅費くらい持ってきてるだろうし、ノーやストライプだって裕福に暮らせるほどの金は持っている。


 この中でただの平民はレザーだけだ。


「そうなんですけど、もし行き先がエラジクだったとすると、歩いていくとかなり時間がかかりますですよ? 砂漠とか山脈とか渓谷とかを避けていくと年単位です」

「え? そうなの!?」


 馬鹿だからそんなこと全く知らなかったレザー。


「まあ……常識だよな?」

「そうね……誰でも知っていることだわ」

「もちろん知っていた。地理の授業は受けている」

「知らなかったにゃー」


 この中に嘘をついている者が二人いる。

 もしかすると三人かも知れない。


 パンは誰が嘘をついているか大体分かったが優しいので黙ってあげることにした。


「それで、大型の馬車を買いたいかなって思うです」

「馬車か……そこまで行くともう旅団だな」


 ちなみに旅団ってのは旅行団の事じゃなく、軍の編成で、大体連隊クラスの大きさのことで、この場合完全な誤用だが、パンは優しいので黙っていた。


「旅団は千人くらいの軍の編成のことにゃ! お前の使い方間違ってるにゃ!」


 だが、意外なところから突っ込みが入り、フリルが顔を赤くする。


「知ってるぜ! だから……あれだ! 千人くらい乗っても大丈夫なやつを買おうぜって意味だよ」


 絶対違うけどむきになって言いつくろってるフリルちゃんは可愛い。


「そんな馬車あるのかにゃ~?」

「あるんだよ、どっかに!」


「本当かにゃ~?」

「どっかにあるだろ、多分!」


「そういうの、あるといいですけど、現実問題として必要ないから十人用くらいのを探しましょう」

「しょうがねえなあ! パンがそう言うならそうしようぜ? なあ、みんな?」


 この時、みんなの目はとても暖かったそうな。


「でも、馬車は高い言っても、それほどでもねえだろ。みんなが金を集めれば買えるんじゃねえか?」

「そうかも知れませんね。まず、ストライプさんとワインさんが女王様にお願いすれば豪華なのをくれるかもしれませんし、フリルさんの財産はかなりのものですから、本気を出せば旅行用馬車くらい買えるかも知れません」

「お、おう」


 フリルは色々突っ込みたかったが、また何か無知を晒してしまうかも知れないので黙っていた。

 鞭を晒してしまうと、レザーがどきどきします。


「ですけど、せっかくみなさんが集まったのですから、みんなで稼いだお金で馬車を買いませんか?」

「みんなで稼いだお金、ですって?」

「うん、いいね!」


「それって、どうすればいいのかしら?」

「お金は見たことがある。理事長が毎月くれる」


 貴族のお嬢様であるワインは金を稼ぐという方法が分からない。

 ノーは魔法学校の講師として実際稼いでいるようだが、労働の意味を理解していないっぽい。

 レザーは理解しているけど、お前の想像だと馬車を買えるまで一年かかるぞ?


「それは、私に考えがあります。聞いてくれますか? 皆さんが皆さんの力でお金を稼ぐ方法を!」


 なんかここまでハードルを上げると、お前大丈夫か? って言いたくなるけど、頭いい子だから大丈夫なんだろうなあ。


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