第27話 ぼんやりとした不安
「ふにゃ~、ごろごろ」
レザーに抱きしめられて甘えるような声を出すストライプ。
その隣でフリルが、人を殺せる目でこちらを睨みつつ、半泣きのパンをあやしていた。
パンの頭を撫でつつ、毛布の下でレザーを叩いているのは可愛いけど、レザーは理不尽だ。
「ば、馬鹿やろう……!」
痛いのでやめて欲しいと、手を掴もうとしたら、手を握ってしまい、赤くなるフリルちゃん。
この子をぎゅっとしてあげたい。
「……とりあえず、静かになったのなら寝ましょう」
奥で行われていることのだいたいは理解しているが詳細までは分からないワインは、とりあえず寝たい。
決して自分が入れなくて拗ねてるわけじゃない。
違うのよ。
ただ、灯りが眩しかっただけ。
「おやすみ」
ノーが言ったのをきっかけに、その空間がしん、となる。
みんなの呼吸だけが響く。
獣撃退用の灯りのせいで、みんなの顔が見えてしまう。
そんなことは一切気にしないストライプは熟睡モードに入り、それに安心した、同じく無頓着なノーも静かに寝息を立てる。
ワインは寝顔を見せまいとしているのか、向こうを向いている。
おそらくまだ寝てはいないだろう。
フリルちゃんは、乙女なのでレザーくんに寝顔を見られまいと、彼が寝てから寝ようと思っている。
が、そのレザーは、女の子を抱き枕にしていて、興奮して眠れない。
やっかいさんとはいえ、眠っていればただの可愛い女の子の身体だ。
暖かし柔らかいしい匂いもする。
そんな女の子を片手でとはいえぎゅっと抱きしめていると、レザーさんのレザーがめくれるくらいに興奮してしまう。
ちなみにレザーさんのは小さいので最大でもフルコーティング万全のようだ。
もう一つ言えるなら、もう片方の手をフリルが握ったままなので、結構体勢がきつい。
つまり、フリルが眠れない原因の一端はフリル自身が担っているのだ。
かと言って手を放すのは嫌だ。
たとえそれが、眠りを妨げるとしても。
「……なあ」
「はい?」
「レザーってそういえば、なんで魔王を倒そうとしてんだ?」
ごもっともな質問だ。
何しろレザーは弱い。
超弱い。
多分ノーと魔法なしの殴り合い対決しても負けそうだし、パンといい勝負すると思う。
頭脳使われたら大敗するだろう。
そんな彼がどういうきっかけで、魔王を倒すとか言い出して旅を始めたんだろう。
ただの頭の悪い馬鹿にしか見えない、いや確かに馬鹿だけれども。
「実は、俺がこんなに弱く馬鹿になったのも魔王のせいなんです」
「は?」
「いえね、信じてもらえないと思ったから今まで言わなかったんですけど……」
そう言うと、レザーはこれまでの事、神に勇者として選ばれたこと、強い能力を与えられるはずが、逆に能力を総じ減らされたこと、魅力だけは上がり続けること。
そして能力が上がり切ると、神によって殺されること。
「……なんだよ、それ?」
それは、理不尽で。
本当に理不尽で。
だから、フリルは怒りが湧いてくるが、それのぶつけ先もない。
叫ぼうにもみんな寝静まっている。
動くことも難しい。
「……フリル、さん……」
だから、握った手をさらに強く握ることしか出来ない。
「倒そうぜ、魔王。いや、俺が、絶対倒してやる」
「フリルさん……」
「てめえは何もしなくてもいい、俺が全部やってやる。だから、それが終わったら、よ……」
フリルの手の握力が急に弱まったかのように、受ける力が抜けていく。
「フリル、さん……?」
レザーが聞き返しても、フリルは答えない。
ストライプを抱きしめているレザーは、その気になれば振り返ることは出来る。
だけど、それをするのはやめておいた方がいいだろう。
「……そういうのは、その時になって考えようか」
しばらくしてから、フリルはそう答えた。
「そうですね」
レザーは答えた。
それと同時に、そこはかとない不安もあった。
魔王を倒すという自分の言葉に、強くて可愛い女の子たちが集まってきてくれる。
だけど、彼女たちが自分についてきてくれるのは、高くなった魅力のおかげだ。
もし、魔王を倒すことが出来て、全てのステータスが元に戻ったとき。
彼女たちは自分をどのような目で見るのだろう?




