第15話 こんなん書きたかったわけじゃないねん
「まず、このパーティーにはルールがある。それを、を守ってもらおうか」
レザーは初耳だった。
あと頼み込んで入ってくれた人に失礼だと思ったが、フリルには逆らえない。
「ルールとは何か」
「まず我々は愛称で呼び合うわ。だから、まずはそれををつけなないと。レザー、出ていってくれるかしら?」
「あ、うん……」
若いけど高名な魔導師にもやるワインの根性。
レザーは黙って外に出た。
またいきなり、スカートをめくったりしているんだろうか?
「これは、ノーだな」
「ノーね」
「ノーです」
三人が誰かの愛称を決める。
ノー?
確か、ワインはパンツがワインレッドだったからで、フリルがフリルパンツだったから。
じゃあ、ノーはノーパン?
少なくとも、ヴェナはパンツが見えていた。
ということは?
「いいわけをさせて欲しい」
さっきと同じくらい穏やかな感情のない声でマリュン師、いやノーが口を開く。
「ヴェナがくるといつもパンツを取られるから、帰るまでは穿かないようにしているだけ。普段から穿いてないわけではない」
「そっか、ま、よろしくな、ノー?」
「よろしくです、ノーさん!」
「よろしくお願いするわ、ノー」
「ふにゃ~」
ノーのいいわけをみんな完全に無視した。
ヴェナも含めて。
「次はあなたね」
「ふにゃ?」
その矛先は、ヴェナに向く。
こいつらヴェナには恨みがあるから、徹底的にやるだろう。
「おとなしくしていなさい?」
「何するにゃ!」
「くっ……フリル、押さえて!」
なんか向こうで格闘が始まったようだ。
「させないにゃ!」
物凄く、暴れてる音がする。
なんか、壊れたような音も聞こえた。
「この魔法工房には問題がある」
それは美術部。
「あーーーーーーーーーっ!」
言ったそばから、何もしていないノーがやられた。
「あーーーーーーーーーっ!」
直後はないと油断したのか、ワインも叫んだ。
「あーーーーーーーーーっ!」
この、高い必死声は、パン?
幼女にも容赦ないヴェナ。
叫び声を聞いたからと中に入ったら駄目だろうか?
おそらく美少女三人が四つん這いで痛みに耐えているんじゃないだろうか?
「うにゃにゃにゃぁぁぁぁっ!」
「やっ……め……っ!」
おそらく残った二人が格闘しているのだろう。
先ほど互角に戦っていた二人が、今また、戦いを──。
「いっ、今ですぅ!」
パンの叫び。
「ふにゃっ! やめるにゃ!」
いつもどこかふざけた調子があるヴェナの、少し真剣な声。
「さっさとどくにゃ! どかないと──!」
「おっと、てめえの相手は俺だ!」
「私よ!」
「にゃにを!」
「あーーーーーーーーーっ!」
「ふにゃーーーーーーーっ!」
部屋の中から、本日四度目のワインの絶叫と、本日初めてのヴェナの絶叫が、外にまで丸聞こえて漏れてきた。
結局、その後正式に決まったのは、マリュン師がノー、ヴェナがストライプ、という名前になったことだけだ。
室内は惨憺たる状況らしく、フリルに説明してもらったが、中には入れてもらえなかった。




