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第12話 日常と非常

「ひどい目にあった」

「え!? それだけ?」


 うら若き美少女で、しかも魔導師の重鎮が、来客の目の前で、尻をまくられ、尻穴に指を突っ込まれるという、常識ではあり得ない大事件が起きたにも関わらず、本人は日常レベルの出来事のように言った。


「私とマリュンの仲だからにゃ~」

「迷惑九割その他一割の関係という認識しかない」


 まあつまり諦めてる関係と言うことか。

 淡々と衣服を直すマリュン師と、彼女をぎゅっと抱きしめる猫耳の子。

 マリュン師も拒否しないので、仲は良さそうに見える。


「あなたはもしかして、ヴェナかしら?」

「む、私の名前を知ってるお前は誰にゃ? なんだ、フェケナか」


 フェケナ、と呼ばれ、一瞬「え? 誰?」といった表情をするワイン。

 あれだけ嫌だったはずのワインという名前を受け入れている自分に気づいた。

 そう、彼女は今でもワインレッドのパンツを穿いているのだ。

 他にもあるんだけど、ワインと呼ばれるからにはそうじゃなきゃいけない気がしていた。


「そ、そうね。私がフェケナだったわね……それはそうと、あなたはナルケナ女王様のボディガードだったのではなくて?」

「そうだにゃ?」

「それがどうしてこんなところにいるのかしら?」


 ちょっと意味が分からないが、この猫耳のヴェナという子は猫耳をしているが、エルフの亜種なのだろうか、女王様のボディガードらしい。


「ナルケナは女王になったから、普段の警備は近衛兵がするにゃ。私は隠密行動の時だけの任務だから好きにしていいと言われたにゃ」

「にしても、何をしているの? あなたもエルフ族の王家に仕える者として恥ずかしくない行動を──」



「お前にだけは言われたくないにゃ!」



「っ!」


 さっきまで自由で不真面目な態度だったヴェナが突然怒鳴るように吠える。


「お前らの一家は、ナルケナの開放政策にずっと反対してたにゃ! そのせいでどれだけナルケナが悩んだと思ってるにゃ!」

「それは……でも、私は……」

「お前らがエルフのことだけを考えている間に、ナルケナは森全体のことを考えてたにゃ! だからケットシーハーフの私を拾ってくれたにゃ! しかも親友って言ってくれたにゃ!」


「こ、これ、どういうことかな?」


 本人たちが取り込み中なので、レザーは取り合えず頭の良さそうなパンに聞いてみた。


「全部が分かったわけじゃないですけど、エルフっていうのは本来私たちのイメージ通り、プライドが高くて排他的だったんでしょう。それを今の女王であるナルケナさんが、このままでは将来がないと思って開放しようとしたんでしょうね。ヴェナって人はケットシーハーフで、ナルケナさんが可愛いがっていたんでしょう。けど、それを他のエルフの人たちは面白く思っていなかったとか、です?」

「なるほど」


 もちろんレザーは全然分かっていなかった。

 とりあえずヴェナって子も可愛いから仲間にしたかった。


「ご、ごめんなさい……でも、私もあの頃は、お父さまもお母さまもみんな反対していて──」

「いいわけなんて聞かないにゃ! お前には、お仕置きだにゃあぁぁぁぁっ!」


「──え?」


 ワインは、フリルと死闘を繰り広げ、その高速戦において自信はあった。

 その彼女が、ヴェナによって、身体をあっさりとひっくり返され、スカートをめくられ、ワインレッドのパンツを下ろされ──。


「あーーーーーーーーーーーーっ!」


 エルフの貴族。

 気取っていたお嬢様だったワインの尻穴に、ヴェナが指を二本入れたら、あられもない声で叫んだ。


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