第110話 魅力は失われた。
「まあ、あれだ……実の姉だけど、死んでよかったと思うからさ。俺も、レザーも」
「……そっすね」
レザーはほんの少しだけ、魔王の夫という地位に未練があった。
それはともかく、ノーは全員を治した。
死んでしまったケットシーだけは無理だった。
「またやったにゃ!」
「あーーーーーーーーーっ!」
早速だ。
一月ぶりくらいに思えるけど、時間にして一時間も経ってない。
「みなさん、これまでありがとうございました! これで何とか魔王も倒せましたし、俺のステータスも……あれ?」
レザーはなんか難しいことを考えてみたけど、女の子の裸しか思い浮かばなかった。
「戻ってねえのか?」
「……みたいですね。もしかして、神様が気付いてないのかも」
「それで、レザーはこれから誰と暮らすの?」
「え?」
「ここにいる全員はあなたを思ってついて来たのよ?」
いや、二人くらいそうじゃないのもいたけど。
「全員と暮らすの? それとも誰かを選ぶのかしら?」
「…………」
そんな事、考えもしなかった。
みんなとは、別れたくはない。
だけど、このままみんなと一緒にいるわけにもいかない。
いや、それ以前の問題だ。
「その……みなさんは、俺のこの魅力でついて来てもらえていると思うんですけど、これが今からなくなるんですよ? その後にそれでもって人がいるなら、考えます」
正直、レザーにはそんなに魅力はない。
だから、誰も来ない、と思う。
「今から、女神さまに祈ります……」
レザーは手を合わせ、目を閉じる。
そして、女神の名前を──。
「女神さまって、なんて名前でしたっけ?」
「ライウェエルだ!」
(ライウェエル様……ライウェエル様……)
(はい、どうしましたか?)
声はすぐに聞こえた。
(あの、さっき魔王を倒しまして、これまで改造出来なかったステータス操作器が戻せると思うんですけど……)
(はい? え? 本当に倒したんですか?)
信じてなかったのかよ。
(倒しました。それで、止めてもらえませんか?)
(分かりました、すぐに取りかかります!)
通信的な何かはすぐに切れた。
「すぐに対応してもらえるそうです」
「そうか……」
フリルはそれ以上何も言わなかった。
だから、他の誰も、何も言えなかった。
「私はセックスが出来ればこだわらないのだが」
「うるさいにゃ!」
「あーーーーーーーーーっ!」
空気が読めない子には罰が下る。
「あ……なんだか……」
自分が強くなった気がする。
頭にあった靄が晴れていく気分だ。
おそらく、元のステータスに戻ったのだろう。
平凡な強さに、平凡な頭脳に、平凡な魅力の。
「これが、俺です……!」




